いつも歩く道 第一部 春 





 運動会もいよいよ終わりに近づいてき、運動会の花形とも言えるクラス対抗リレーが始まろうとしていた。

「はあ、いよいよか……」

 早速、洋一がだらけた声を上げる。

「何でそんなに疲れてるのよ?」

 そんな洋一に茜が呆れ気味に声を掛ける。

「クソ長い運動会の最後の方だぞ。疲れてて何が悪い」

「綱引きの一回戦で負けただけのくせに何で疲れるのよ」

「いや、ほら……応援とか……」

「やってないでしょ?」

「ああ、あんまり……」

「そんなんでどうするのよ。洋一アンカーでしょ?」

「ああ……え?」

 凄く間抜けな声を出す洋一。

「洋一って、走る順番知らなかったの?」

「そんなことより、普通は速いやつが最後だろ」

「洋一足速いでしょ?」

「少なくとも里奈と武よりは遅いぞ」

「残念でした。里奈は最初に引き離す役で武君が中盤で遅れを取り戻す役。だから、洋一がアンカーなの」

「……里奈のほうは分かったとして、武は何で遅れを取り戻すんだ?」

「後半に速い人を集中させてるから、里奈のリードもなくなっちゃうってことでしょ?」

「だったら、里奈も後ろにまわせば良いじゃないか」

「前半の遅れって、結構致命的なんだよ」

「はあ……分かったよ。やればいいんだろ」

「そ、やればいいの」

 にこやかな笑顔で言い切る茜。

「茜……」

「ん? 何?」

「お前がしくんだろ」

「ん、よくわかったね」

「まあ、だいたいな……」

 洋一は溜息をついた。














「さあ、いよいよ始まります。運動会最後の種目、クラス対抗リレーです」

 場内アナウンスの元気な声がいよいよリレーの始まりを告げる。

「さあここで、運動会を見に来ている一般の方々にご説明いたしましょう……」

「説明しなくていいだろ」

「仕事なんだから仕方ないだろ」

 いきなり場内アナウンスにケチをつける洋一に武が呆れ気味に声を掛ける。

「あれ? 武こっち?」

「ああ、六番手だからね」

 普通に同意する武。

「つーか、何で俺をアンカーにした」

「茜さんのたっての希望」

「ふ〜ん。で、茜は何番手なんだ?」

「確か、九番手だったと思うよ」

 武が自信なさ気に言う。

「俺の前か……何考えてんだ、茜のやつ」

「まあ、何も考えてなかったんじゃないかな。決まったの二週間も前だし」

「二週間前って、俺記憶にないぞ」

「洋一は確か、熟睡してたはずだよ」

「それで茜が勝手に決めたのか?」

「う〜ん、確かそうだったかな」

「それより、何で茜にそんな発言力が有るんだ?」

「あの場合は、茜さんの発言力よりも誰もやりたがらなかったからっていうほうが大きかったんだよ」

「だからって、何で俺?」

「そこは、先生が自薦他薦は問わないって言ったからかな」

「……そりゃ、寝てりゃあやらされるか……くそぅ、あの教師め」

 洋一が呻くように呟く。

「ところで、洋一って出る種目を聞いたんだよね。何で、その時に走る順番も聞かなかったんだ?」

 武が思い出したように当然の疑問を口にする。

「ああ、それな……里奈と武がいるから最後じゃないって、高をくくってた」

「つまり、自業自得なんだ」

「みたいだ」

 武のもっともな結論に洋一は頷くしかなかった。



















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