午後の部が始まり、しばらくした頃――
「ちょっと待てーーーー! 何であっちは野球部とか空手部とか柔道部とか筋肉野郎ばっかなんだーーーー! しかも、相撲部の超大型新人までいるじゃないかーーーーー!!」
クラスの休憩所で洋一が絶叫していた。
それと言うのも、次の種目……綱引きでの対戦相手が、洋一が絶叫していた通り反則なまでの筋肉野郎チームだった所為である。
「洋一君……五月蠅い」
珍しく里奈がツッコム。
「いや、だって……いくらなんでもあれは出来過ぎだろ?」
「仕方ないんじゃないか?」
「仕方ないって……そりゃ、クラス分けした奴には、誰がどの部に入るかなんてわからんとは思うが……」
「だったら納得しろよ。その代わり、こっちは足の速い面子が多いから良いじゃないか」
「それは良いんだが、負けた後に森に何て愚痴言われるか……」
「ああ、それは……分かるかも」
揃って溜息を吐く、洋一と武。
「……それはそうと、珍しく最初に反応したのが里奈だったな」
「そう言えばそうだね。いつもは茜さんが真っ先に反応するし」
「そうだ。何か足りないと思ったら、茜か」
「そう言えばさっきから見てないね」
洋一と武はキョロキョロと辺りを見回す。
「茜ならお手洗い」
そんな男二人の下から里奈が言った。
「本当か?」
「こんな事で嘘つかない」
「それもそうだな」
「洋一、そろそろ始まるぞ」
「ん? ああ。じゃあ行くか」
洋一と武が綱引きの会場に向かう。
その背中に、
「二人とも、頑張って」
里奈が応援の声をかける。
「おう」
「ま、出来る限りね」
洋一と武はそれぞれ背中で応えた。
「洋一……行った?」
洋一と武がいなくなったのを見計らったように茜が現れた。
「武と一緒にね」
里奈は全てが分かった風に落ち着いて答えた。
「里奈。あたしのお手洗いが嘘だって分かってたでしょ?」
「うん。伊達に茜の親友じゃない」
「そうだよね……里奈には分かるんだよね……」
「洋一君のこと?」
うん。洋一に酷いこと言っちゃたから」
「酷いことって、アレ?」
「見てたの? 里奈」
「見てた。でも、洋一君はそんなこと気にしないと思う」
「そう?」
「うん。茜ほどじゃないけど中学校の頃からお友達だから少しは分かる」
「あたしの方がよく分かる?」
「うん。だって、茜は幼馴染み。わたしと年季が違う」
「そっか……うん、そうだね。洋一があんなこと位であたしのこと軽蔑するわけないもんね」
「うん。洋一君、優しいから」
「そうそう。洋一、馬鹿だもんね」
「……茜も十分馬鹿」
「あ、里奈ひど……」
「あ……武」
茜のことを普通に無視して綱引きの会場を指差す。
そこには、少し土で汚れた洋一と武がいた。
「あれ? 洋一、早かったね」
「おお、まあな」
少し自慢げに言う洋一。
「その自信は……勝ったの?」
「いや、負けた」
「何でそんなに自信満々で言えるのよ」
「だって、あれは……なぁ」
と、武に振る洋一。
「ねぇ」
武も同じように相槌を打つ。
「何があったの?」
里奈が不安げに訊く。
「開始した瞬間、引き摺られてた」
「え?」
「?」
武の簡単な説明に茜と里奈は揃って首を傾げる。
「まあ、つまり。抗う暇もなく負けたってことだ」
洋一のフォローに茜と里奈は揃って頷く。
そして、
「だめじゃん」
茜のツッコミが決まった。
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