いつも歩く道 第一部 秋 





「ぱんぱかぱーん……」

 教室の扉を開けて早々、里奈がファンファーレ(?)を口に出す。

 すこし、里奈っぽくないがそこはご愛嬌である。

「どうした、里奈?」

 すでに、衣装を着こなしてみんなと雑談に花を咲かせていた洋一が聞く。

「……ん、茜に衣装着せてきた」

 ぶい。っとピースサインを出して里奈が言う。

 ますます、里奈っぽくないがそこはご愛嬌だ。

「ふぅん……で、その肝心の茜はどうした?」

「そこでしり込みしてる」

「引っ張り込め」

「……いいの?」

「クラスの総意だ」

「……りょうかい」

 そう言うと、里奈は廊下で立ち往生している茜を引っ張り込むために廊下に出た。









「いや、いやだってば」

「……でも、見せないと話が進まない」

「見せなくても話し進むでしょ?」

「進まないの。それに、廊下で騒ぐ方が人目につく」

「う゛……」

 さすがの茜もどっちがより恥ずかしいのか理解したらしく一瞬固まった。

 その隙を里奈が見逃すはずもなく、そのまま茜を教室の中に引きずり込んだ。

「ふぇ、ふぁ、ふぎゃーーーー」

――ドンガラガッシャン

 引き摺りこまれた時の体勢が悪かったのか、里奈と茜は盛大な音をたてて倒れこんだ。

「…………」

 一同唖然。

 それもそのはず、教室に倒れこんだ里奈と茜はかなり危険な状況で絡み合っていたからだ。

「あ、あは、あはは……」

 乾いた笑い声を出す茜。

 倒れた拍子にスカートはめくり上がり、里奈の手が偶然にも服をたくし上げる様になっていたらしく、純白の眩しい下着が見えている。しかも、それだけならいいのだが、倒れた拍子にどこかに引っ掛けたらしく、下着が微妙に切れて危ない所まで見えそうになってる。

「あ、茜?」

 一同が何も言えぬ中、洋一だけが何とか茜に声をかける。

 が、それがきっかけになったのか、茜の顔が徐々に赤く染まっていき、目に涙がたまっていく。

……ヤバイ。

 クラスの全員(茜を除く)が本能的に危険を感じ取った。

 次の瞬間――

「男子ーーー! 全員後ろ向くっ!!!」

 誰ともなく、女子が叫ぶ。

 その怒号に男子は全員有無を言わず後ろを向いた。

「誰か、タオル持ってない? ああ、それと誰か更衣室から松嶋さんの制服持ってきて」

 テキパキと指示を出す。

 まあ、茜が爆発すればこんなものではすまないのだから、皆必死である。

「それと、男子っ! 今のうちに教室から出てきなさい」

「まあ、仕方ないよな?」

「仕方ないね」

 洋一と武も一言交わして、その言葉に従った。









「はぁ〜、茜ちゃん大丈夫?」

 先程まで大声を張り上げていた女子が顔を伏せている茜を覗き込む。

 ちなみに、先程と茜の呼び方が違うのは、本人曰く「指示を出す時は内輪の呼び方をしないのは普通でしょ?」とのこと。

 何はともあれ、彼女のおかげで茜の暴走が未然に防がれたのだからその功績は大きいと言える。

 また、茜の暴走とは何かという疑問はその内明らかになるだろう。

「それにしても、災難だったね。でも、茜ちゃんも悪いんだよ? 素直に着ないんだもん」

 相変わらず、顔を伏せたままの茜。

「まあ、いいけどね。茜ちゃんらしいって言えばらしいし」

 あんまり言うのもどうかと思った彼女は、もう一人の犠牲者の方を向く。

「で、下敷きになった里奈ちゃんは大丈夫?」

「……ん、大丈夫。それと、茜のことありがとう」

 茜に押し倒されていたはずの里奈は、手早く動いてくれた彼女に礼を言った。



















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