程よく色づいた落ち葉が舞い散る。
オレンジに染まった、いつも通る並木道。
季節は……秋。
紅葉だけが理由ではないオレンジ色の並木道をいつもの男女が歩いていた。
十月の中旬。既に散り始めた落ち葉を踏みしめながら洋一と茜は夕焼けに染まる道を歩いていた。
「いや〜、秋だね〜」
沈みかけの夕日を眺めながらしみじみと茜が言う。
「つか、何でこんな時間に帰らなきゃいけないのか甚だ疑問なんだが」
「それは、あれだよ。先生の所為」
「十中八九……いや、100%お前の所為だろ」
そう言って、洋一は隣の茜を睨む。
「だ、誰だって忘れるってあんな事」
「普通は忘れないっての」
軽い溜息と共に洋一は沈みかけの夕日に目を移す。
「だから、ごめんって謝ってるじゃ〜ん」
「いつ謝ったよ? 第一、俺じゃなくクラスの連中に……」
「謝るのが筋だろう?」
「そうそう、謝るのが筋……?」
突如後ろから聞こえた、二人には聞こえ馴染んだ女性の声が聞こえてきた。
「あ、さとぽんだ」
「げ、せんせ――ぐぼぉ」
刹那、洋一の顎がその女性の拳で撃ちぬかれる。
「学校を出たら先生と呼ぶな、と言ったはずだが?」
洋一たちの学校の先生――と思しき――女性は、咥えていたタバコを吹かしながら洋一を睨みつける。
はっきり言って、その姿は極道のソレによく似ている。と言うより、超えている。
「だからって、先生が生徒に暴力振るって良いのかよ?」
よろよろと立ち上がりながら洋一は聞き返す。
「あ? まだお前分かってねぇのか? 先生ってのはな、学校の中で勉強教える奴の事言うんだ。つまり、学校出たらパンピーと変わらねぇの。お前だって、生徒である前にパンピーだろ? ほら、パンピーがパンピーを殴ろうが殺そうが問題ないだろ」
「問題大有りだって。特に後半……つか、あんたの台詞全般的に」
洋一は、女性の事を怒らず、むしろ呆れた様に見る。
「よっす。さとぽんも今帰り?」
そこに茜が能天気に声をかける。
「ん……おお、茜か。まあ当然だろ? どっかのクラスのHRが今まで続いてたんだ」
「あはは……もしかして、さとぽん遠まわしにあたしの事責めてる?」
思い当たる節のある茜は苦笑いを浮かべる。
「あ〜……別にそんなつもりはないけど。それにしてもさ……コレのどこがいいの?」
女性は洋一を親指で指す。
「え、えっと〜……」
「コレで悪かったな、コレで」
二人がそれぞれ反応をする。
「まあ、誰と誰が付き合おうがあたしは一向に構わないんだけどね」
そう言って、興味なさ気にそっぽを向く。
さて、そろそろこの女性の紹介をしないと何が何だか分からなくなるので説明しよう。
彼女の名前は、藤村聡子。『私立常盤学園』の教師であり、洋一たちのクラスの担任である。性格はサバサバしていてぶっきらぼう。頭を働かすのが嫌いで常に手が先に出る方という典型的な直感型。しかし、その割に論争になると相手の痛いところをザックリと抉り取っていく。仕事は仕事。プライベートはプライベートとはっきり区別しているため、学校以外では先生と呼ばれる事を極端に嫌っている。仕事の時は根の性格は変わらないが、プライベートと比べると恐いぐらい良い人になっている。ちなみに、プライベート時の女生徒からの呼び名はさとぽん。
「さて、若い二人の邪魔をするのもなんだし、私は早々に帰るとする。じゃあな」
何気に年寄りくさい事を言って聡子は帰っていった。
「なあ、茜」
「何、洋一?」
「アレで、俺たちの担任なんだよな」
「今更だよ、ね」
何となく落ち込んでしまう二人だった。
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