「んー…」
ぐっと伸びをする。
「疲れた…」
「運動不足じゃない?」
紫光院と勤が、相変わらず言い合っている。
「ふふ…」
その様子を見て笑うみなも。
「またやってるのか」
「そうみたい」
ここに来るまででもやってたっていうのに、元気なものだ。
「久しぶりだね」
みなもがつぶやく。
「…ああ」
彩ちゃんが消えてから今まで、俺は一度もここに来ることはなかった。
俺とみなも以外のみんなは、彩ちゃんだけでなく力の存在すら忘れていた。
それがよけいにつらくて、来ようとしていなかった。
「ちょっと散歩してくる」
俺はみなみに言って歩き出した。
いつの間にか、俺はあの神木の前にいた。
ここに向かっていたのは確かなんだが、ぼーっとしていたせいか気付いていなかった。
「…ひさしぶり、彩ちゃん」
神木に向かって話しかける。
返事が返ってこないのはわかっているが、それでも俺は話しかけた。
「お久しぶりです、丘野さん」
「え…」
声が聞こえた。
懐かしい声が。
「どうして…」
神木の影から、彩ちゃんが現れた。
「風は、どこに還るんでしょう」
それは以前にもされた質問。
その言葉で、俺は納得した。
風は、生まれた場所へと還っていく。
彩ちゃんという風は、ここで生まれた。
つまりは、そういうことなのだろう。
「…もうすぐお別れです」
「また…会えるよな?」
「はい」
風は決して止まらない。
ほんの短い間すれ違っただけ。
「さようなら」
「さよう…なら」
そうして、別れの言葉を交わした。
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あとがき
ようやっと1000hit書けた…。
パソコン調子悪くてねー。直す余裕がなくてねー。
ま、ちょくちょくこうなりますが、頑張らないと。
ではでは、黒犬でした。
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