さらさらと、笹の葉が風に揺れる。
そこに、いくつかの短冊が、さまざまな飾りとともに吊るされていた。
願いや祈りを託されて。
〜ずっと傍に〜
7月7日、七夕。
高校3年にもなって、今さら何を願うのかとも思った。
「きれいだね……」
隣であゆがつぶやく。
ほかにも、名雪や香里、誘ったわけではないのだが北川までいた。
「何が?」
短冊や飾りで彩られた笹は夜だからということもあって見栄えはしない。
それに、星空なんてしょっちゅう見ているから改めて綺麗だとかの感想も思い浮かばない。
「みんな」
あゆは、はっきりしているのか曖昧なのかわからない返答をする。
後ろでは、とうとうアルコールが入ってしまったようだ(秋子さんが了承したらしい)。
「あいつら……」
苦笑しながらつぶやく。
「いいんじゃないかな? 楽しければ、それで」
「それ自体は正論だろうが、きっぱりと法律違反だぞ」
俺も飲んだことはあるが、まあ気にしないでおこう。
「ばれなければ大丈夫だよ」
「食い逃げ犯がよく言うよ」
思い切り皮肉る。
「うぐぅ…」
反撃できないでいるのを見ると、自分でもそこは納得しているらしい。
「そういえば、あゆはどんな願いを書いたんだ?」
「ふぇっ!?」
……そんなに驚くようなことか?
「普通は訊かないでしょ、そんなこと」
「心の声を読むな」
「だって声に出してたし」
「ぐっ……」
ここ最近はなかったから油断してしまったようだ。
以後気をつけることにしよう。
「で、何書いたんだ?」
「言わなきゃだめ?」
「当たり前だ。でなきゃ訊いてないからな」
「じゃあ、笑わないって約束して」
「わかった。安心しろ」
内容によっては思いっきり爆笑してやるから。
「…なんか怪しい」
「大丈夫だ」
「うぐぅ…」
少し間が空く。
「えっと……これからも、ずっと祐一君と一緒にいられますようにってお願いしたんだよ」
「わははははは……!」
「笑うと思ったけどさぁ……」
諦めたようにつぶやく。
「そんな当たり前のこと、わざわざ願わなくてもいいだろ」
笑いをこらえながら言う。
「え?」
「だから、お前は死ぬほどタイヤキ食いたいとか買いてればいいんだ」
「……うん。そうだね…………」
「そういうこと」
「うん!」
「んじゃ、そろそろ戻るか」
誰の声も聞こえないところを見ると、全員潰れたかもしれないが。
ほんの数歩の距離を、ゆっくりと手を繋いで歩く。
空には、織姫と彦星が、愛を語るように輝いていた。
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あとがき
これは一体何のジャンルになるんだろうなぁ……。
一応ほのぼのとか記載してるけど、自分でもようわからん。
てなわけで(どんなわけで?)七夕記念をお送りしてきました。
久しぶりの短編だったから自分では違和感を感じてしまうんですが、気にしないことにしました。
なので、もし皆さんが同じように思ったら、ぜひ気にしないで下さい。
ではでは、黒犬でした。
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