水瀬家の初詣










「うわー」

混雑するだろうと思い、年が明けてすぐではなく昼間に初詣に来た俺達。

メンバーは秋子さん、名雪、真琴、あゆ、そして俺の計五人。

「すごい人…」

あゆがつぶやく。

真琴は、あまりの人数に固まってしまっている。

名雪と秋子さんは慣れたもので、さも当然と言った様子。

それほど有名でもないのにこれほどの人が集まるのは、単に近くにここしかないというだけ。

つっ立ってどうにかなるわけでもないので、俺たちは歩き出した。



「やっとか…」

一時間近く待ち、ようやく順番が回ってくる。

五円玉を投げ入れて手を合わせる。

「…」

おまいりを済ませると、さっさと移動する。

「ねぇ祐一」

「なんだ真琴」

ひっつきながら尋ねてくる真琴。

「何をお願いしたの?」

「言えない」

「何で?」

「言ったら叶わなくなるからな」

「そうなんだ」

「…は?」

突然会話に参加するあゆ。

ちなみに、「そうなんだ」はあゆのセリフだ。

「知らなかったのか…」

真琴はともかく、あゆもとは。

「とりあえず、早く帰ろう」

正直寒い。

名雪と秋子さんは俺達の前を歩いている。

俺はふたりに走り寄る。

「どうかした、祐一?」

名雪が言う。

「いや、秋子さんに聞きたいことがあって」

「わたしに?」

「ええ。この後どこかに寄るのかなって」

「特に予定はないけど…」

その言葉に俺は少し安堵する。

「そういえば、祐一は何をお願いしたの?」

「名雪…」

お前も知らんのか。

「人に言ったら叶わなくなるんだぞ」

「そうだっけ?」

この天然ボケ娘が。

心の中でツッコミをした。

正直な話、願いごとなんてしていない。

あるといえば、みんながいるこの風景がいつまでも続いてほしいということ。

けれどそれは、願わずとも叶うこと。

俺はそう思っている。

きっと、みんなも一緒だろう。

「早く帰ろう。寒い…」

みんなを急かし、俺は歩き出した。



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あとがき

短いなー。しかも終わり方が……。

新年一発目、スタートは踏み外したかな。

まあ、これにめげずにがんばろうと思います。

それでは、黒犬でした。



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