今日は栞の誕生日だ。
恋人として祝うのは当たり前のことだが、かなりツライ状況に俺はいる。
なにせ、美坂家全員プラス俺なのだ。
緊張しないわけにいかない。
「祐一さん」
追い討ちをかけるように栞は俺から離れないし…。
お義母さん――おばさんとか呼んだらこう呼びなさいって怒られた――が、ケーキをテーブルの上に置いた。
呼び方からわかるように、公認どころか、むしろ強制みたいになっている。
「じゃあ、始めましょう」
こうして、おそらく栞以上に緊張しながら誕生パーティーが始まった。
〜Birthday panic〜
「ふう…」
ため息を吐く。
「なんか疲れたよ」
俺は一言つぶやいた。
「なんでわたしの誕生パーティーで祐一さんが疲れるんですか?」
「そりゃあ、あの状況ならな…」
俺は言葉を濁す。
パーティーが終わってから、俺は栞の部屋にいた。
「でも、嬉しかったです」
二枚のストールを手に言う栞。
去年に約束(?)した通り、俺はストールを作った。
初めてということでなかなか完成せず、出来上がったのはなんと昨日のことだ。
出来栄えに関しては、秋子さんに教わったので多分大丈夫だろう。
「もちろん泊まっていきますよね?」
栞が不安げに問う。
「他にどうしろっていうんだ?」
明日も学校だと思ったら、いつの間にか制服と鞄とが全部運ばれているのだ。
きっちり明日使う教科書も入っているし。
着替えなんかもだ。
ここまでされたら遠慮できない。
「ちなみに、俺はどこで寝ればいいんだ?」
今更わかりきった事ではあるが、一応聞いてみた。
にこっ、と栞が笑顔になる。
「…マジ?」
「はいっ」
やっぱりここで寝るのか…。
ふと時計を見ると、11時過ぎ。
「寝ようか…」
俺はあきらめたようにつぶやいた。
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あとがき
なんか祐一はため息ばっかだな…。
まあいいや。
短いけど、今回はさらばっす。
黒犬でした。
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