日曜日。
学生のみならず、ほとんどの者にとって安息の日。
「のはずなんだけどな…」
机にかじりつきながらつぶやく。
受験を間近に控えているので休みなどあってないようなものだ。
「祐一!」
この声で、その勉強すら潰れてしまうことになる。
〜君に贈る輝石〜
必死になって頑張っているところに真琴が飛び込んでくる。
「真琴、お前な…」
「今日が何の日か知ってる?」
まくし立てるように言う。
「はあ?」
「…その様子だと知らないみたいね」
がくりと項垂れる真琴。
「何なんだよ?」
「誕生日」
嫌な予感が…
「誰の?」
「美汐の」
やっぱりか…
完璧に忘れてた。
「それでも美汐の恋人なの?」
しかもやっちまったし…
真琴が突っ込んだということは『あれ』をやったんだろう。
まあ、それは置いといてだ。
「…どうすっかなー」
俺はひたすら絶望的につぶやいた。
「ここだな」
何とかプレゼントを用意し、美汐の家の前にいた。
「にしてもあいつは…」
真琴も一緒にと思ったのだが、
「ふたりっきりの方がいいでしょ」
なんて変に気をつかって辞退した。
また何かの漫画に感化されたんだろうが…
俺はチャイムを押した。
「はーい」
ほどなくして現れたのは美汐本人だった。
「祐一さん、どうしたんですか?」
「いや、最近あまり会えなかったからな」
俺が受験勉強で忙しいせいなのだが。
「だから、久しぶりにデートでもしようかと思ってな」
「そうですか。と、とりあえずあがって下さい」
少々戸惑ったような声で言う美汐。
結構外は寒かったので、俺はお邪魔することにした。
「それにしても、相変わらず突然ですね」
文句を言うような口調だが、その顔は嬉しそうに見えた。
「まあな。ところで…」
辺りを見回してから、
「今日はひとりなのか?」
今日は日曜日だし、美汐の誕生日だ。
まあ、よくよく考えてみたら美汐の誕生日だということは教えてもらってないのだが…
「ええ。親はふたりとも出張で2,3日はいませんから」
「なるほど…」
都合がいいかもしれない。
「じゃあ、ふたりっきりか…」
「そ、そうですね」
顔を赤くして頷く。
「とりあえずは、おめでとう」
「…はい?」
何のことかわからないといった様子だ。
「だから、今日はお前の誕生日だろう」
「ああ、そうでしたね」
どうでもいいことのようにつぶやく美汐。
「真琴から聞いたんだ。まあ、普通は知っておかなきゃならないんだけどな」
「いいんですよ。わたしが言わなかったんですから」
美汐はすまなそうに、
「今は受験で忙しいですから、負担をかけたくなかったんですよ。ただでさえ、祐一さんは無茶をする人なんですから」
そう言い切った。
…ごもっとも。
「でも、そういう大事なことは言ってほしかったな」
「…すみません」
「とりあえず、ほら」
真琴から預かっていたプレゼントを渡す。
「これは…」
鈴が入っていた。
真琴が腕輪代わりに身に着けていたのと同じものが。
「へぇ」
おそろいの物とは、真琴らしいな。
「ありがとう、真琴」
静かにつぶやく。
「それで、これが俺からのプレゼントだ」
俺は小さな包みを手渡した。
「開けてみてもいいですか?」
「もちろん」
恐る恐る包みを開けていく美汐。
「これは…」
出てきたのは、当たり前だが小箱だ。
「あっ…」
「誕生石だろ」
「ええ」
ラピスラズリの指輪。
それが、俺からのプレゼント。
「こんな高価な物、いいのですか?」
「高価も何も、母さんから譲り受けた物だからな」
「そうなのですか」
「ああ」
またすまなそうな顔をする美汐。
「気にするな。それに、お前だから渡すんだ」
「どういう…」
言いかけて、顔を赤くする。
「そういうことだ」
「あ、ありがとうございます」
「今日が終わるまで、ふたりで祝おうぜ」
「はい」
嬉しそうに頷いた。
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あとがき
美汐の誕生日記念として書いた誕生日SS。
かなり無理やりなのが気になるが…まあ、いいか。今後も誕生日記念はこんな感じになると思います。
感想や希望等ありましたら、掲示板に載せて下さい。
なるたけ、添えるように頑張りますので…
では、黒犬でした。
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