〜鈴の音をもう一度〜
「わぁっ」
「おっと」
転びそうになった真琴を慌てて支える。
「たく、そんなに急がなくてもいいだろ」
「だって…」
今日は真琴の誕生日だ。
なので、プレゼントにと思い俺は好きなものを買ってやると言った。
それで商店街に来たのだが…。
「わぁっ」
さっきからずっとこの有様だ。
「ちゃんと前を見て歩けよ」
あちこち余所見ばかりして、その度につまずいている。
「気になるなら中に入って見ればいいだろ」
「欲しいものは決まってるんだもん」
「あっそ…」
渋々引き下がる俺。
だが…、
「わぁっ」
やっぱりつまずく真琴。
「まったく…」
俺はぼそぼそつぶやきながら真琴の手を握る。
「これならいいだろ」
すると真琴は手を離して腕を組む。
「これがいい」
「好きにしろ」
「うんっ」
力いっぱいに真琴は頷いた。
「ここか?」
「うん」
「…ホントにここなのか?」
「そうだよ」
「ホントにここでいいのか?」
「いいの!」
俺達が来たのは100円ショップだ。
何度聞いてもここがいいというので、諦めて中に入る。
「欲しいのはこれ」
そう言って差し出すのは、
「鈴か?」
「うん」
それは、以前買ってやったことのあるあの鈴だった。
真琴が消えたときに一緒に消え、そのままだった。
そして、真琴が戻ってきても鈴は消えたままだったのだ。
「あれはとても大切なものなの。記憶がなかったあのときの思い出がいっぱい詰まってるから」
鈴を見つめながら言う。
「祐一との思い出がいっぱい詰まってるから。だから、欲しかったの。また、思い出をいっぱい作りたいから」
「そんなに欲しいなら、自分で買えばいいだろ」
「それじゃあ駄目なの」
「どうしてだよ」
「あの鈴も祐一に買ってもらったから」
そういうことか。
「だから、これも祐一に買って欲しかったの」
「わかった、買ってやるよ」
そう言って、真琴のものとよく似たキーホルダーを手に取りレジに向かう。
そして、精算を済ませて店を出る。
「どうしてそれを買ったの」
財布に買ったキーホルダーをつける。
「これでお揃いだろ」
「あっ…」
驚いた顔をする。そして、
「うん!」
すぐに笑顔に変わる。
チリン、チリン―
鈴の音は、絶えることなく鳴り響いた。
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あとがき
ネタが思いつきません…。
そのためか、話の内容がかなり微妙です。
そして、あゆはもっとひどいことになってます。
本当にすいません。いいわけばかりの黒犬でした。
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