ピンポーン――
俺は少し緊張しながらインターホンを鳴らす。
「あ、祐一さん」
現れたのは佐祐理さんだった。
そう、ここは舞と佐祐理さんの二人が住んでいるアパートである。
たびたび訪れている俺がなぜ緊張しているかというと、今日が舞の誕生日だからだ。
去年はあんなことがあったために、結局祝うことができなかった。
だから、三人での誕生パーティーは初めてなのだ。
奥へ行くと、すでに準備は整っていた。
「祐一、遅い…」
一応約束通りの時間なのだが、なぜか文句を言われてしまった。
「それじゃあ、始めますよ」
その様子にクスクスと笑いながら、佐祐理さんが言う。
その言葉を合図に、パーティーが始まった。
〜一年越しのバースデイ〜
パーティーといっても、普段と何かが変わるわけではない。
佐祐理さんの作った御飯をみんなで食べて、おしゃべりをして…。
ただそれだけだ。
違うことといえば、料理が多少(?)豪華なことと、プレゼントを用意してあるだけ。
誕生日なのだから当たり前だが、いかにも俺達らしいなと思う。
「おめでとう、舞」
そういって佐祐理さんがプレゼントを渡す。
「ありがとう」
一言だけ言って受け取る。
そのプレゼントは――
「…かわいい」
等身大かそれ以上の大きさのナマケモノのぬいぐるみだった。
…どこから買ってきたんだ?
聞いてみようかとも思ったが、やめておいた。
「俺からもおめでとう、舞」
用意していたプレゼントを渡す。
そして、佐祐理さんにも。
「ふぇ?」
「いいから、二人とも開けてみて」
言われるままに開ける舞と佐祐理さん。
「あ…」
「わぁ…」
二人がほとんど同時に感嘆の声を上げる。
中に入っていたのは、ペアリングみたいなものだった。
違うのは、その頂点で輝いている宝石だ。
「さすがに本物を買えるだけの予算はないから、イミテーションなんだけど…」
言いながら、身に着けていたネックレスを取り出して見せる。
「三人おそろいだよ」
少し恥ずかしく思うが、これしかないとも思った。
「ありがとう、祐一」
「ありがとうございます、祐一さん」
これからもいろいろなことがあるかもしれない。
けれど、この笑顔を俺は守りたい。
あらためて、そう思った。
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あとがき
本当はもうちょいプレゼントとかいいの用意したかった。
けどまぁ、高校生のフトコロなんてこんなもんか…。
そんなわけで(どんなわけで?)、次回会いましょう。
黒犬でした。
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