〜恋人だから…〜
「どういうことか、説明してくれるわよね?」
真夜中の公園に俺達はいた。
「ここ最近、一緒に帰るどころか話すらまともにしてくれない…。わたしのことが嫌いになった?」
言おうとした俺よりも先に香里が言う。
その目には、うっすらと涙が浮かんでさえいる。
「…どうしても、秘密にしておきたかったんだ」
「だからって…」
「今日が何の日か知ってるか?」
「…いえ」
その顔は、嘘を言っている顔ではない。
「今日は何日だ?」
「2月28日よ」
「ハズレだ」
時計を見せながら、
「もう12時を過ぎてる」
と言った。
そして、ポケットに手を入れる。
「誕生日、おめでとう」
「え…」
もうすでに日付が変わり、今は3月1日だ。
「どうして、それを…?」
「名雪に聞いた」
本当は偶然だったが、それまで言う必要はなかった。
「だから今まで黙ってたんだ」
プレゼントの資金調達のため、ずっとバイトをしていた。
「なんでわたしを避けてたの?」
「ボロが出るといけないからな」
「…ばかっ」
小さくつぶやく。
「怖かったんだから。嫌われたんじゃないかって…」
「…悪かったな」
香里を抱き寄せて言う。
どうしても今日がよかった。
恋人だからこそ、贈りたかったもの。
「プレゼント、受け取ってくれるか?」
「あたり…まえじゃない…!」
特別な人に、特別な日に贈るもの。
ポケットから取り出す。
そして、香里の指にはめてやる。
「指輪…」
「ああ」
照れくさいから、ぶっきらぼうに言う。
「誕生日おめでとう、香里」
もう一度言う。
「ありがとう、祐一」
今度は、返事が返ってきた。
帰り道。
手を繋いで歩いていた。
まだ風は冷たいけど、寄り添っていれば暖かかった。
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あとがき
北×香でもよかったのですが、北川を書くのが苦手なので…。
いずれ書こうとは思ってますが、長編も滞っているので難しいかも。
短いですが、今回はこれで。
では、黒犬でした。
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