〜Lovers day?〜










「往人くん!」

佳乃が近寄ってくる。

「はい、これ」

「ん?」

渡されたのは小さな包み。

「これは?」

「チョコレートだよ」

…何でだ?

そう訊こうとすると、佳乃が先に言った。

「今日はバレンタインデーだからね」

なるほど。

日付を見ると、確かに今日は2月14日だ。

「あ、ポテト」

「ぴこっ?」

「はい、ポテトにも」

「ぴこ〜」

何だ、毛玉もか。

「一生懸命作ったんだよ」

…マテ。

「てことは、手作りか?」

「うん!」

元気よく頷く佳乃。

反対に、俺とポテトは怖気づいてしまっている。

「ポテト、先に食っていいぞ」

俺は先手を打つことにした。

「ぴ、ぴこっ!?」

ふっ、もう遅い。

佳乃の目は、完全にポテトのほうを向いている。

期待のまなざしを受けるポテト。

「ぴこ…」

あきらめて口にする。

…お、意外と普通に食ってるな。

もともと溶かして固めるだけのものなんだから、そう大きなミスもなかったんだろう。

「じゃあ、俺も食うか」

安心して食った。

もちろん、全部平らげた。

形はいびつだったが、うまかったので問題ない。

「…ぴこっ!?」

「?」

ポテトの顔色(?)があまりよくなかった。

…まさか。

「ぴこ〜…」

ふらふらするポテト。

「しまった、遅効性かっ!?」

すっかり失念していた。

が、時すでに遅い。

なんせ、全部食っちまったのだから。

――ぐう、きゅるるる…。

「ぐおっ」

腹部に激痛がはしる。

「ど、どうしたの往人くん!?」

慌てた様子で駆け寄ってくる。

「あ〜、ポテトまで!」

声を上げる佳乃。

そのとき――

「ただいま」

聖が帰ってきた。

「…む?」

この様子を見て、すぐに状況を判断する。

「寄り合いにでも行くか…」

聖は逃げた。

待てっ! と大声で叫びたかったが、腹に力を入れると非常に危険だ。

結局、どうすることもできずに見送ってしまった。

唯一の足止めとなりうる佳乃自身は、聖が帰ってきたことに気づいてなかったし。

あ、もうムリ…。

俺は緩慢な動作で、トイレへ向かった…。



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あとがき

往人なさけね〜。
てか、AIRの初短編がこんなオチとは…。
でもまあ、こんな調子でどんどん種類を増やしていきたいと思ってます。(あんまよくないけどね)
では、黒犬でした。



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