ドンドンドン――
扉を強くノックする音が、暗い部屋に響く。
「祐一!」
俺の名を呼ぶ真琴の声。
けれど俺は、返事を返さない。
一人になりたかった。
俺の中にしかない『あいつ』との思い出。
それに、ひたっていたかったから。
〜冬の日の記憶〜
出会いは、突然だった。
真琴の読む漫画みたいだが、俺にとってはそうだった。
ともに過ごしたのは、ほんのわずか。
それも、もう7年以上も前のこと。
けれど俺は、今でも鮮明に思い出せる。
「どうしてだよ……あゆ…」
死んだ。
7年間意識不明だった。
そして――
昨日の夜、息を引き取った。
新聞にあった記事を思い出す。
「じゃあ、あれは何だったんだ?」
あの冬。
何度もあゆと会った。
時には一緒に朝飯を食べた。
商店街を歩いたし、たいやきも食べた。
名雪も秋子さんもあゆのことを覚えているんだ。
「なのに、なんで…」
幻だったのか?
でも、この思い出は本物だ。
どうして思い出してやれなかったんだろう。
探し物に付き合ってやればよかった。
映画館に一緒に行けばよかった。
……後悔ばかりが、胸に残る。
あの時、どうすればよかったのか。
そして今、どうすればよいのか。
答えはまだ、見つからない。