真琴が帰ってきてから数日がたっていた。
数ヶ月離れていたことで多少ぎこちない部分もあったが、今ではそれもすっかりなくなっている。
「祐一っ」
…またか。
真琴は、それが当たり前であるかのように俺の布団に入ってくる。
この積極さも、結婚(?)したということがあるからだろうか。
秋子さんも名雪も何も言わないのは、単にこの状況を楽しんでいるからだろう。
不満があるわけじゃない。
ただ、世間体というものを考えると……。
「こいつに言っても無駄か」
即座にあきらめる。
こうして、俺たちはいつものように眠りについた。
〜日常の風景〜
…………。
ゆさゆさ、ゆさゆさ…。
「ん…?」
目覚めを促すように体が揺さぶられる。
けれど、まだまだ寝足りないので俺は抵抗する。
「……て…さい……ん」
誰かの声が聞こえる気がするが気にしない。
今日は日曜で休みのはずだ。
ならば、眠っていて構わないはずだ。
そう決断すると、布団を頭までかぶる。
「起きてください、相沢さん」
……この声は?
秋子さんではないし名雪でもない。
当然ながら、真琴でもない。
「天野…か?」
「やっと起きてくれましたね」
どうやら当たりらしい。
なぜここに?
「にしても、ずいぶん仲がいいんですね」
…やばっ。
俺は慌てて起き上がる。
「はあ…」
真琴はぐっすりと寝ていた。
思いっきり手遅れだった。
…言い訳でもしておくか?
そう思ったが、やめておいた。
なんだか泥沼にしかならないような気がしたならない。
「おはようございます、相沢さん」
「おはよう、天野。…すぐに行くから下で待っててくれ」
泣きたいのを堪えて言った。
俺達はものみの丘に出かけた。
朝のことは、天野は何も言わなかった。
ふたりで行けばいいだろと言う俺を、真琴は強引に引っ張っていこうとする。
少々面倒ではあったが、暇であることに変わりはないのでついて行くことにした。
真琴が帰ってきてからまだ一ヶ月も経っていない。
なのに、いつもそうしているように振舞う俺たちは、どう見えるだろう。
ともに歩きながら、ふと俺はそんな風に思った。