Side ONE







「こうして集まるのって、実は初めてだよね」

瑞佳が、ほかの2人に向かって言う。

「そうですね」

穏やかに答える茜。

「特に、里村さんとは接する機会あまりないしね」

同意する留美。

浩平が茜とともに見つけたあの公園で、3人は会っていた。

することはないと思っていた、浩平の思い出話をするために。









〜想いは空をこえて〜










3人は、もうすぐ卒業してしまう。

そうなると、ここで浩平を待つことはできなくなってしまう。

瑞佳は音大への進学が決まっていたし、ほかの2人も同じように進路が決まっていた。

だから、卒業してしまえばこの街に来ることがそう頻繁にはできないからだ。

そうなってしまう前に、この行き場のない想いと、思い出に“けじめ”をつけようとしたのだ。

「あの1,2ヶ月は、本当に早かったよね」

留美は思う。

ありのままの自分でいられた、浩平と過ごす時間を。

「……ええ。いつもと変わらないはずなのに、あっという間でした」

茜は思う。

止まない雨はないんだと教えてくれた、浩平の優しさを。

「なのに、普段では考えられないくらい色々なことがあって……」

瑞佳は思う。

ぎゅっと抱きしめてくれた、浩平の温もりを。

いつまでも、話しは尽きることがなかった。





ざっざっざっ――

駆ける音が公園に響く。

遠くからのその音は、話が尽きてしまい黙っていた3人には、やけに大きく聞こえた。

「もう行こうか」

留美が言う。

まだ日は高かったが、もうこれ以上は話すことがない。

他愛ない世間話ならいくらでもあるが、誰もが、今日は浩平以外のことを話題にしたくはなかった。

「……そうだね」

瑞佳も同意し、立ち上がる。

と――

「はぁ、はぁ……」

「…え?」

――懐かしい息遣いが聞こえてきた。

けれど、そんなはずはないと思い直す。

「瑞佳!」

叫び声。

それは、ずっと待っていた人の声によく似ていた。

瑞佳は、自分の名を呼ばれて反射的にそちらを向く。

「……う……そ…………」

そこには――

「浩平!」

瑞佳は駆け出した。

留美も走り出そうとして、茜に止められた。

「……そうね」

留美は、自分に言い聞かせるように頷いた。

それをしていいのは、瑞佳だけなのだから、と。

「帰ろ」

「ええ」

留美の言葉に、茜は頷いた。

「またね……」

静かに言葉を残して、2人は去った。

「こう……へい…………」

こらえきれないほどの涙が、瑞佳の頬を伝う。

「瑞佳……」

浩平は、名前をつぶやいて、彼女を抱きしめた。

「好きだ、瑞佳。……もう一度、付き合ってくれるか?」

そうして浩平が紡いだ言葉は、瑞佳が待ち望んでいたもの。

「うん…」

そう頷くのがやっとだった。

けれど、浩平はそれに応えてくれるように、強く強く抱きしめる。

2人の影が重なった――








<<<  前へ戻る  >>>