Side ONE
出会いは、いつだっただろう。
もう日付さえもおぼろげで、それでもあの日のことは鮮明に覚えている。
そう、覚えているんだ……。
〜もう一度、出逢いたい〜
いくつもの季節を、たくさんの時間を、浩平と過ごしてきた。
それらはすべて他愛ない日々だったけど、私にとっては大切な思い出。
学校に通うときにも持っていくようになったウサギの人形を、友達は痛々しい目で見る。
何人もの人に告白された。
浩平の親友であった住井君にも。
けれど、そのすべてを私は断った。
もし告白を受ければ、私は、少なくとも楽にはなれるのかもしれない。
それでも、そうと知っていて断り続けた。
浩平を、その温もりを覚えている間は、待っていたいから。
浩平のことを覚えているのは、たぶん私だけじゃない。
きっと、里村さんや七瀬さんも覚えてるのだと思う。
直接話したわけじゃないからわからないけど。
でも、話す必要なんてないから、それでいいんだとも思う。
「みんな、待ってるんだよ」
空に向かってつぶやいた。
風が流れる。
もしできるなら、届けてくれないだろうか。
この言葉を、この想いを。
「ずっと、忘れないから。……ずっと、待ってるから」
届けてくれることを祈って、言葉を紡ぐ。
いつかまた逢えることを信じるしか、今の私にはできないから。