〜新しい日常〜


「ただいまー……っと」

家に入ると、小さな影が飛び込んで来た。

「はは……ただいま、真琴」

腕の中にいる狐を撫でながら、俺はリビングに向かう。

「あ、祐一」

「名雪、天野はもう帰ったのか?」

真琴に会いに、天野は毎日ではないが、度々家を訪れている。

「うん。30分くらい前に」

「そうか」

真琴を名雪に任せ、着替えに行く。

下に下りると、もう夕食の準備が済んでいた。

「あゆ、来週の頭には退院できるって言ってたよ」

「本当!?」

「ああ」

俺が答えると、

「そう……それなら、早めに部屋を整えないと」

秋子さんも名雪も、嬉しそうに顔を緩ませて言う。

「栞も、もうすぐ通院しなくても済むらしいし」

あまり頻繁には会えないが、久瀬の話では、舞も佐祐理さんも元気らしい。

あの冬にあった、全ての出来事。

それが、形こそ違えど、全て幸せな方向に向かっている。

無論、シコリというものは必ず残る。

俺は名雪、栞、舞の想いを拒絶したのだから。

けれど、それでも……

俺は、名雪も、栞も、舞も……確かに好きなんだ。

ただ、好きの形が違うだけで。

「ようやく、雪が融けたんだな」

7年前に降り積もり、決して融けることのなかった雪が。

「どうかしたの、祐一?」

「いや。なんでもない」

「そう?」

怪訝な顔をする名雪と、微笑む秋子さん。

足元で、我関せずという様子の真琴。

その全てが、どこにでもある日常のひとかけら。

でも、それがひとつの幸せの形だろうと、俺は実感する。

「「「ごちそうさま」」」

食べ終わると、俺は真琴を連れてリビングに移動する。

名雪はさっさと風呂に向かい、秋子さんは後片付けをしている。

俺は真琴を撫でながら、テレビを見る。

そうして時間を潰して、名雪に続いて風呂に入り、自室に向かう。

まだ時間は早かったけど、俺は電気を消すと、ベッドに潜り込んだ。








<<<  前へ戻る  >>>