Side Kanon







「……しばらく、独りにしてくれ」

そう言って、名雪たちに背を向ける。

「どうすればいいのか。……どうしたいのか、か。考えたいから」

静かに告げると、自室に戻る。

「……ちゃんと、応えてやらないとな」

そっとつぶやいた。









〜想い、この胸に〜










名雪や北川、香里に栞、天野もいたか。

みんな、やっぱり気付いていたようだった。

「当たり前だよな。自分でも無理してるってわかるくらいなんだから」

けど、そうしなければならないだけの理由が、俺にはあるから。

もちろん、名雪たちの気持ちも痛いくらいにわかる。

「でもな、これだけは頼っちゃいけないんだよ」

俺はもう、気付いてしまっているから。

栞や名雪たちが、俺のことを好きでいてくれることに。

俺も、みんなのことが好きだ。

だから、誰かに頼ってしまえば、その誰かが特別になってしまう。

そう簡単に割り切れるほど、俺は自分の気持ちを整理できているわけじゃないから。

誰よりもあゆのことが好きなはずなのに、その気持ちがどっかにいってしまいそうで怖かったのだ。

「単なる言い訳だな、これは」

苦笑する。

「答えなんて、始めからひとつしかないんだ」

あゆが俺を待っていてくれたように。

今度は、俺が待つ番だから。

俺にはそれだけしかできないけど、それをできるのは俺だけだから。

あゆを心配しているのは、俺だけじゃないだろう。

名雪や秋子さんや、あゆと関わったみんながあいつのことを心配している。

けれど、そう……。

「……ようやく、見つかったよ」

ずいぶん長いこと悩んできた。

けれど、揺ぎない想いが、しっかりとこの胸にあった。

あいつらが俺を想ってくれているのも事実だろう。

だけど、そんなの関係なくあいつらはああして言葉を投げてきたのだ。

精一杯の気持ちを、ぶつけてきたのだ。

なら、それに応えられるだけのことを、俺もしなければならない。

「ありがとな、みんな」

ようやく、歩き出せそうだ。

「行かないとな」

あの場所に。

俺は手早く着替えると、その場所に向かって歩き出した。








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