あの日から、ちょうど一年が過ぎた。
いろいろあったが、大切な夏から。
そして今、ここにいる。
〜思い出にさよならを〜
「もう一年も経つんか…」
潮風を受けながらつぶやく。
実感がない、というのが正直なところだから、それも仕方がないが。
それに、何より忙しかったから。
……そんなのは言い訳に過ぎないか。
それに、今日はそんなことを確認するために来たんじゃない。
忙しさと未練とで、ずっとできなかったことがひとつだけある。
それを、果たしに来たのだ。
「なあ、観鈴…?」
骨壷に向かって話しかける。
ずっと傍にいたくて。
ずっと傍にいてほしくて。
手放すことをためらっていた。
お墓に収めてしまうのが怖かった。
「でもな、それも今日で終わりや」
いつまでも、観鈴はここにいたらいけないように思うから。
観鈴には、ずっと目指していた場所があるから。
「だから、さよならや」
逢いたくなったら、またここに来ればいい。
だから――
骨壷を、海に流す。
人は空を飛ぶことができないから。
「いつかは辿り着けるやろ。あんたやったら」
空と海が交わる場所。
……水平線の向こう。
少しの間見つめて、背を向けた。
歩き出せば、道はどこまでも続いている。
「うちはこの道を歩いてく。だから、あんたはあんたの道を歩いてき」
そうすれば、きっと辿り着けるだろう。
「またな、観鈴」
それが合図。
どこまでも広がる空の下。
どこまでも続いてく海を背に。
歩き出した。
一羽のカラスが、羽ばたいた。
前へ戻る
あとがき
独白が大阪弁じゃないのは、私が苦手だからです。
なので、あまり気にしないで下さい。
ていっても、ただ単に最近はAIRをぜんぜんやってないだけなんですが。
それにしても、ようやく記念以外のSS増えてきたなぁーと思います。
誕生日記念とかやってるのって、もううちらくらいだろうけど。
ま、めげずに続けれる限りはがんばりたいなと。
TOPに出る機会がないので、こんなところで抱負を述べちゃってますが……。
では、こんなところで。
黒犬でした。
前へ戻る