春。
桜が咲き乱れる。
枯れない桜。
今でこそ、春に咲き、季節が過ぎると枯れる。
と言っても、そんな当たり前のサイクルになったのは去年のこと。
「あらためて見ると、綺麗なもんだよなぁ……」
俺は心からそう思った。
「そうね」
「うわっ」
突然の声に驚く。
「どうかしたの?」
「……なんだ眞子か」
聞こえないようにつぶやく。
「何か言った?」
「いや、何も。……それより、行こうぜ」
「あ、そうね」
俺たちは並んで歩き出した。
桜に彩られた並木道を。
〜夢桜〜
桜が枯れて、和菓子を生み出すことしかできなくなった――
さくらはほぼ全く、俺も他人の夢を覗き見ることができなくなった。
――はずだったのだが。
「ふわぁ〜」
欠伸をする。
「随分眠そうね」
「ああ……ここんとこあんまし眠れなくてな」
春眠暁を覚えず、とかそういうことではない。
桜が再び咲いたからだろうか、たびたび他人の夢を見る(見させられる)ことがある。
なくなったときは睡眠不足に悩まされずにすむと喜んだものだが。
……まさかこんな落とし穴が仕掛けられていたとは。
「んー。いい天気……」
公園のベンチに座って一休みする。
眞子が言うとおり、花見でもするにはぴったりの天気だった。
つまり、それだけ暖かいと言うことで……。
「ん……」
睡眠不足にこの暖かさ。
こんな状況でいったい誰が睡魔に勝てよう?
記録的スピードで、俺は眠ってしまった。
「んん……」
目を覚ますと、空がいっぱいに広がっていた。
後頭部には柔らかな感触。
「…起きた?」
「ああ」
ゆっくりと身を起こす。
「そんなに眠れないの?」
「まあ…な」
曖昧に答える。
魔法のことは、未だに話して良いかどうかわからないからだ。
にしても……。
「まさか膝枕してくれるとはな」
「いいじゃない。その……恋人同士なんだし」
少し赤くなりながら答える。
「…そうだな」
答えてから、俺も気恥ずかしくなる。
ぐ〜。
「……あんたね。せっかくいい雰囲気だったのに、全部台無しじゃない」
「はははっ、しょうがないだろ」
笑いながら立ち上がる。
「行こうぜ」
手を差し出す。
「そうね」
眞子は差しだした手を取らずに腕を絡めてきた。
恥ずかしくはあったが、たまには良いかとも思った。
来たときよりも恋人らしく、桜に包まれた並木道を歩いていった。
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あとがき
ふたりともなんか性格変わってるような気が……。
まあいいか(おい)。
とりあえず、ダカーポ第一弾は眞子でした。
次に誰やるかは考えてません。
まあ、たのしみにしてて下さい。
……どれくらい時間かかるかわかりませんが、今のところは書く気ですから。
ではまた次回逢いましょう。
黒犬でした。
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