数日して、俺は再び眞子に呼ばれた。

それがどういうことなのかすぐにわかった。

だから、俺はそれに応じた。

そうして今、俺たちはまた屋上に来ていた。









〜偽りから本物へ〜










「話って何?」

「こないだのこと」

「それはわかる。俺は何の用かって訊いてるんじゃなくて、話の内容を訊いてるんだから」

少々冷たい物言いだろうが、それでも俺は言う。

優しくしてあげることは、今の俺ではできないことだから。

「うん…」

頷いて、押し黙ってしまう。

………………。

どれくらいの間だろう。

長いのか、それとも短いのか。

ただ沈黙だけが、辺りを支配する。

そして――

「透也の言ったこと、ずっと考えてた」

ゆっくりと口を開いた。

「……あの娘に会って、ちゃんと断ってきた」

眞子にとって、それをするのにどれだけの勇気が必要だったのだろう。

「そうか」

ただ一言だけで、俺は答える。

「これで、いいんだよね?」

不安なのだろう。

「お前自身、どう思ってるんだ?」

「あたしは……」

「一生懸命悩んで、ようやくたどり着いた答えだろ?」

後悔さえしなければ、それでいい。

「ごめんね」

「どうして謝るんだ?」

むしろ、俺が謝らなければならないはずなのに。

「だって、あたしは透也の気持ちも考えずにあんなこと言っちゃったから」


――『このまま、付き合っちゃおっか』


安易な言葉。

それは、眞子を想っていたあの娘にとってもっとも残酷な言葉だ。

『あなたが付きまとってくれたおかげで付き合うようになりました』

そんなつもりじゃないのかもしれないけど、そう言っているようなものだ。

何よりも大切なのは自分の気持ち。

そのために他者を傷つけてしまうのはしょうがないことだ。

けれど、向き合わないのは卑怯だと思う。

たとえそれが、傷つくことでも、傷つけることでも。

しっかりと受けとめて、応えてやらなければいけないんだ。

「でも、これで本物になれるだろ?」

「……え」

眞子と時間をともに過ごして、1つだけ気づいたことがある。

それは――

「でも…」

「あの言葉は、出任せじゃないだろ?」

――いつの間にか、眞子を好きになっていたこと。

「俺は、眞子のことが好きだ」

その想いを、言葉にする。

「……」

少しの沈黙。

それから、

「あ、あたしも…」

恐る恐る、

「透也のことが…」

自分の気持ちを、

「…好き」

つぶやいた。

こうして、俺たちは本物の恋人同士となったのだ。








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