「ちょっといい?」
「ん?」
昨日のことがあってか、眞子の態度は少しぎこちなかった。
「ああ」
そう答えて、眞子について行く。
そして、俺たちは誰もいない屋上に来た。
〜たったひとつの……〜
「あれから考えたんだけどさ」
「……」
俺は黙って眞子の言葉を待つ。
「このまま、付き合っちゃおっか」
「……」
「そうすればさ、繰り返されることなんてないし、それに……」
必死になって言う眞子。
以前にもこういうことでトラブルでもあったのか、自分で断るのが怖いようだった。
けれど、俺は――
「断る」
きっぱりと言った。
「え?」
「今の眞子と付き合っても、幸せにはなれないよ」
冷たく言い放つ。
「これが、眞子の見つけた答えなの?」
「……」
「あの娘を傷つけたくないから、自分であきらめてくれればいい。そう思ったんだろうけど」
「あたしは……」
「そんなの、あの娘の気持ちも蔑ろにしてるだけだ」
「あたしはっ……」
「それってさ、結局逃げてるだけじゃないか」
傷つけるのが嫌だから。
けれど、演じてあきらめてくれるようにするのと、ちゃんと自分の気持ちを伝えること。
どちらが、酷いことだろう。
行き過ぎてしまうほどに真剣な想いを蔑ろにしているのは、どちらだろうか。
「話がこれだけなら、俺はもう行くから」
これは眞子が自分で見つけなければならない。
月並みだが、俺は眞子ではないから。
だから、眞子自身の答えを、見つけなければならない
そのために俺は、眞子を突き放した。
背中越しに、嗚咽が聞こえたような気がした。