転校やら何やらで慌ただしかった冬が終わって、季節は春に。
学年が1つ上がって、朝倉や杉並といったいつものメンバーに、眞子が加わった。
そうして移ろいながらも変わらない毎日は、唐突に終わりを告げた。
「ねえ透也」
「ん?」
眞子の――
「あんたって、恋人いる?」
この一言によって。
〜偽りの恋人〜
「はあ!?」
イキナリナニヲイイダスンダコイツハ?
いきなりのことに、頭が混乱してしまった。
……いかん、落ち着け俺。
「どうかした?」
しれっとした様子で言う眞子。
「あのなあ…」
言いかけて、慌てて周りを見る。
「よかった、誰もいないみたいだな」
こんなことが誰かに聞かれたら大変だ。
「で、いったいどういう意味だ?」
「どういうって、そういう意味だけど」
ますますわからん。
「あっと、勘違いしないでね」
「は?」
「実は……」
「……なるほど」
大体の事情はわかった。
「けど、それなら断ればいいだろ」
「…でも」
渋っている様子を見ると、何か直接断れない理由でもあるのだろうか。
「まあ、俺はかまわないけどさ」
そうでなくても最近は一緒にいることが多いのだから、それほど変わりはないし。
「ほんと!?」
「ああ……」
こうして、俺と眞子は恋人のフリをすることになった。