「……約束しよう」
うずくまる眞子に、静かに告げる。
「もし、俺が助かったら……」
「そんな約束聞きたくないわよ!」
「聞いてくれよ!」
気がつけば叫んでいた。
〜いくつもの想い出と、たったひとつの約束を〜
「俺だって離れたくないよ! 十中八九助からないんだ。なら、最期までお前の傍にいたいさ!」
「なら……」
「けど、俺は父さんや母さんと約束したんだよ。『生きることを諦めない』って」
不治の病を持つ俺に向けられた、たった一つの言葉。
放任主義で、間違いを犯さない限りは何も言わない。
そんな両親と交わした、最初で最後の約束。
「俺はこの島で、守りたいものが出来た。大切な人を見つけたんだ」
「……」
眞子は驚いたような顔をする。
「俺は、最初は最期まで一緒にいたいと思った。けれど――」
振り返れば、昨日のことのように思い出せる日々。
それはすべて、幸せのかけらだ。
「そうじゃないんだって気づいた」
両親との約束、胸にある想い出。
初めは不協和音だった2つ。
「最期まで一緒に、でもいいかもしれない。けど、それより俺は――」
今は、綺麗に重なっている。
「その人と一緒に生きていたいと思ったんだ」
指先で涙をぬぐう。
「眞子。君と一緒に」
プロポーズしてるみたいで恥ずかしかった。
けど、言わなければならない。
いつか、が俺には保障されていないから。
「だから、約束しよう」
言いながら、あるものを手渡す。
「これって……」
「俺がまた眞子と逢えたら……」
「うん」
そうして、俺と眞子は別れた。
たった一つの約束を胸に。