そして迎えた日曜日。

変わらず咲いている桜より、色づく紅葉の方がいいのか。

普段はそれなりに人がいる桜公園に、今日は人影はなかった。

その奥。

一際大きく咲き誇る桜の木の下に、俺と眞子はいた。

少し冷たい秋風と、ふわりと舞う桜の花びら。

何を演出しようとしているのか、それらは絶えない。

だが、不思議と心は落ち着いた。

「眞子」

深呼吸して、口を開く。

改めて、目の前にいる少女の名を呼んだ。









〜あふれる想いを言葉にかえて〜










「言わなければならないことが、3つある」

そのどれもが、眞子にとって辛いこと。

「俺は、眞子を傷つけなければならない。それでも、聞いてくれるか?」

「……」

少しの間。

逡巡が見え隠れする。

「わかったわ」

眞子は頷いた。

「まず、俺の体のことだ」

あれから、頻繁にとは言わないが、何度か起こった発作。

「病名はよく知らない。知ったところで、治るわけじゃないからな」

「……」

目を見開いて、何かを言おうとする。

が、唇をかんで、声を抑える。

先を促しているんだと判断して、続ける。

「そして、先も長くない……医者は言うには、次の春は迎えられないそうだ」

「そんな!?」

堪えきれず叫ぶ。

「嘘みたいだけど、本当のことだ」

「……続けて」

「わかった」

どれほどの覚悟をすれば、泣き叫ばずにいられるのだろう。

この事実を俺が知ったときは、思い切り叫んだというのに。

「だから、俺はこの島を離れようと思ってる」

「どう……して……?」

「このままここにいたって、未来はないから」

「でも……!」

「もしかしたら、治せるかもしれない」

眞子の声を抑えるように、一際大きな声で言う。

「10%にも満たないけど、可能性があるなら俺はそれに賭けたい」

「あたしは……」

見る間に溢れる涙。

「あたしは透也と離れるなんてイヤよ!」

絶叫。

それは慟哭にも似て……。

「どうしていなくなっちゃうのよ!?」

返す言葉はない。

さらなる傷を与えるだけだと、わかっているから。

「どうして、何も言ってくれないのよぉ」

とうとう崩れる。

そんな眞子に向かって、俺は口を開いた。








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