季節は秋。
木々が色づき、それまで短かった夜が深まっていく。
一年のうちでもっとも短い季節。
それは得てして、残りの時間が短いということを意味した。
伝えなければならないことがあるのに……。
それをしたとき、今のこの日常がどうなってしまうのか。
怖くてたまらなかった。
〜繋いだ手と手の温もりと〜
「ねえ透也……」
「なんだ?」
休日の昼下がり。
特にやることのない俺と眞子は、リビングでくつろいでいた。
「なんか隠してることない?」
「え?」
「だって、最近の透也の様子、なんか変だよ?」
「……」
やっぱり気付いていたか。
朝倉は眞子のことを、男勝りだとかがさつだとか言うが、俺はそうは思わない。
むしろ、聡明だと思う。
心の機微を敏感に感じ取る。
だから、なにか悩み事を抱えていたりするとすぐにそれに気付く。
「……ま、隠し通せるとは思ってなかったけどな」
素直に認める。
「眞子に話さなければならないことがある。ただ……」
「……」
眞子は黙って聞いてくれる。
「時間が欲しいんだ」
正直に思ったことを言う。
「誰かを……眞子やみんなを傷つけてしまうからだとか、そういう理由じゃない」
顔を伏せる。
「いや……それもあるか。ただ、1番の理由は、決心がつかないからだ」
勇気が持てない。
「だから……え?」
じっとりと汗ばんだ手に、眞子の手が重なる。
「無理して話さなくていいよ。きっと、一番辛いのは透也なんだから」
温かい。
眞子の手が、そして言葉が。
心に沁みこんでいく。
「来週の日曜。桜公園で」
「え?」
「……話す」
ようやくで搾り出した言葉。
「わかった」
重なった手をぎゅっと握りながら、眞子は頷いてくれた。