「……わかった」
水越総合病院の院長で、萌先輩と眞子の父親もである人。
その人が、悲痛な面持ちで頷いた。
……頷いて、くれた。
「すみません、我侭を言って」
「いや、いいよ。ただ……」
「わかってます。いつか、必ず」
「……」
言わなければならないことだ。
が、今はまだ……。
〜揺れるココロ〜
検査のため、1週間ほど入院せざるを得なかった。
その間、朝倉や萌先輩、眞子が見舞いに来てくれた。
眞子の父親が俺の父親と中が良かったということもあって、部屋は個室だった。
また、いつの間に決めたのか知らないが、俺は水越家に住まうことになってしまっていた。
確かに、いつ発作がおきるかわからない以上、1人でいるのは危険だろう。
多少強引ではあるが、父さんも父さんなりに心配してくれてのことだ。
だから、有難く好意に甘えることにした。
「……でも、眞子は良かったのか?」
「何が?」
「急に一緒に住むことになって」
「あたしは気にしてないわ。恋人だもの、気にする理由がないじゃない」
そう言う眞子の表情はどこか翳っていた。
……まあ、しょうがないだろう。
「じゃあ、これからよろしく頼むよ」
「うん!」
今度は、満面の笑みだった。
……それが、1月ほど前の出来事。
始めはぎこちなかったし、朝倉や杉並たちにもいろいろ言われた。
それらがなくなって、この生活が日常となったころ。
俺たちの関係もまた、前までのそれとはずいぶんと変わった。
恋人のフリをしていた時、本当の恋人になった時、過去の出来事を知ってぎこちなくなってしまった時。
どの時よりも、自然にいられるような気がする。
一緒に住むことになったからだろうか。
当たり前のように過ごしていたというのに、改めて感じた。
眞子という存在の大きさを。
だからこそ、真実を言えないでいた……。