「「「おお〜」」」
テーブルに並べられたカレーに、なぜか感嘆が聞こえる。
「これくらい普通だろうに」
こいつらはこの程度もできないのか?
「普段料理なんてしないから、まともなモンが出てくるだけでもすごいと思ってな」
「妙な関心の仕方をするな朝倉」
「どうでもいいから食べましょ」
眞子の言葉でみんな席に着いた。
「それじゃ……」
いただきます、と声をそろえて食べ始めた。
〜波乱のお泊り会〜
〜食事・就寝編〜
「お、なかなか美味いじゃないか」
一口食べて、朝倉が言う。
「ありがとうございます」
作った当人である美春が答える。
「じゃあ、このサラダは?」
「わたしです」
音夢の質問に萌先輩が。
「……透也は?」
「デザートだ」
「ええっ」
あからさまに眞子が驚く。
「まあそんな反応だとは思ったが。それに、デザートって言っても実際にはお菓子みたいなもんだ」
「一応訊くけど、なに作ったの?」
「ひ・み・つ」
「気色悪いからやめい!」
「まあ、とりあえず食おうぜ」
「そうね……」
眞子は疲れたように頷いた。
一同は、目の前にあるものを見て静まり返っていた。
それを尻目に、美春がせっせと切り分けている。
「どうしたんですか、皆さん……」
「まあ、予想はしてたけどな」
美春が切り分け終える。
「それじゃあ食べましょう」
現実に帰還できてない一同(杉並は平然としているが)以外が食べ始める。
「……ほう」
「どうかしたか杉並」
「いや、なかなかのものだと思ってな」
「そりゃどうも」
よほど気に入ったのか、美春は速攻で食べ終えていた。
「早っ」
ようやく復活した朝倉が言った。
他も食べ始める。
「先輩、作り方教えてくださいよ」
「ああ」
「マジですか? やったあ!」
……普段朝倉が美春のことを『わんこ』と呼ぶ理由が今わかった気がした。
そろそろ寝ようかという話になって、部屋割りを話し合うことにした。
「とりあえず、朝倉とお姉ちゃんが一緒の部屋でしょ」
「なぜ決定?」
だが朝倉の疑問は無視されて、話が続く。
「美春と眞子はわたしの部屋ですね」
これは当然のことだ。
「俺たちはどこになるんだ? まあ、そこのソファでも構わんが」
さらりと杉並が言う。
その点に関しては、俺もどこでも眠れるので特に何も言わなかった。
もっとも、杉並は冗談なのか本気なのかわからないが。
「じゃあそれでいいんじゃないか」
朝倉もまたさらりと言う。
「俺の部屋は無理っぽいし、音夢の部屋も論外だ。親父たちの部屋を使うわけにもいかないしな」
「でも……」
「俺たちは構わないぞ」
渋る音夢に俺は言った。
もともとの言いだしっぺである杉並も何も言わない。
「じゃあ……」
こうして部屋割りが決まった。
そして、おやすみ、と言って別れた。