群青学院の屋上に、鉄を打つかん高い音が響いていた。

打ち捨てられたアンテナ。

それを、みんなで組み立てているのだ。

曜子にとってこの作業は苦ではない。

何度もやった作業だし、そうでなくても1人でじゅうぶんこなせる。

が――

「島、ここの配線よろしく」

「了解」

「山辺は、島の手伝いをして」

「はい」

曜子の指示に従って、2人は動く。

どういう心境の変化か、彼女は1人ではやらなかった。

以前の放送部ではありえなかった、協力して何かをしようということ。

それが今、ここにあった。

「休憩しませんか?」

見里が、作業しているメンバーに向かって言う。

「……そうね」

集中していたせいで気づかなかったが、全身が汗でじっとりと濡れていた。

見ると、2人もそれは同じらしかった。

資材を置いてあるテントに移動する。

「はい、どうぞ」

冷えたジュースを渡していく。

いくら夏が去ったとはいえ、そうすぐに涼しくなるわけではない。

作業していればなおさらだ。

休んでいる間、黙っているのも変なので、みんなで雑談する。

昼のDJや各種放送は、今までどおり見里がやっている。

これは、見里以外に向いている人間がいないということが大きい。

アンテナを組み立てるのはかなり大変な作業だから、というのもある。

ようするに、適材適所というやつだ。

「桐原さん、大丈夫でしょうか」

冬子はあの日以来部活には顔を出していない。

それが、見里にとって心配だった。

「それは自力で立つしかない。わたし達ではその手助けもできない」

曜子の言葉は、冷たく聞こえるかもしれない。

だが、ここは群青なのだ。

他人にはどうすることもできない。

「わたし達は、わたし達にできることをやればいいってことですか?」

「そういうことね」

「で、それがアンテナを組み立てることか」

友貴や美希が頷く。

「そのために、わたし達は放送部という名目がなければならない」

部活動としてでなければ、アンテナを組み立てることは許可されなかっただろう。

「だから、わたしはDJや放送の方をやらなければならないんですね」

「ええ」

曜子は答えて立ち上がった。

「そろそろ再開しましょう」

そう言って、テントを出た。





物陰から、そんなやりとりの一部始終を見ている人物がいた。

「……よし」

人影は、何かを決意した様子でつぶやいた。



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あとがき

意外と勢いだけで書けるものなんだなぁ……
実は、まったく推敲してません。
本当に思いついたまま作ってるんですよ。
……まあ、たまにはこういうこともあるさ。
そんなことより、次回はいよいよ完結です。
伏線も何も考えてませんが、しっかりと終われるようにしないとなぁ。
ま、また次回会いましょう。
では、黒犬でした。



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