スイッチを押して、放送を始める。

「こちら、群青学園放送部――」

いつもどおりの言葉。

……きっと、誰かに届いているだろう。

「――生きている人、いますか?」









〜Message〜










支倉曜子は、放送部の面々を屋上に呼んだ。

「どうしたんですか、支倉さん?」

部長である宮澄見里が、集まったみんなを代表して訊ねる。

「アンテナを組み立てるの」

その言葉に、訊ねた見里だけでなく、島友貴と山辺美希も驚いた様子だった。

「どうしてですか?」

桐原冬子だけが、冷静に問いかける。

夏休み前には、そんな話もあった。

だが……

「今さらそんなことして、何か意味があるんですか?」

制服に身を包んだ冬子が反論する。

「ある」

曜子は、きっぱりと言った。

「太一に、言葉を届けるために」





佐倉霧は、1人で佇んでいた。

友達がいないわけではない。

新しい学校での生活は、思ったよりも酷いものではなかった。

だが、今は1人でいたかった。

「太一先輩……」

彼のことを思い出していたからだ。

自分は太一になにをして上げられたのだろう。

時には刃を向けたこともある霧を、太一は受けとめた。

そして、豊のことを友達だといってくれた。

「わたしは、何ができたんだろう」

あれからも、何度か放送を聴いた。

ラジオから流れる一方通行の言葉。

もし叶うなら――

「話がしたい」

言葉を、想いを伝えたい。

それだけが、霧の心にわだかまっていた。





山間の道路を、桜庭浩は自転車で走っていた。

汗ばんだ体に、秋風が心地よく吹きつける。

「……ん?」

ラジオからノイズが聞こえた気がして、足を止める。

「気のせいか」

一度足を止めてしまうと、それまでの疲労が一気に襲ってきた。

ちょうど近くにベンチがあったので、それに座って一休みする。

「ふぅ……」

二人で旅をする。

そういう約束をしていた。

だから、桜庭はラジオを片時も手放さなかった。

「行くか……」

そしてまた、桜庭は走り始めた。



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あとがき

勢いだけで書いたCROSS†CHANNELのSSです。
そして、初の中編(?)ということにもなります。
他の長編も溜まっているのですが、気分転換になんとなく作ってみました。
一応送ってはあるのですが、更新は白の気分しだいですからねぇ……
ま、完結はできるようにしたいと思ってます(当然か
では、また次回お会いしましょう。
黒犬でした。



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