09/10/31(STA) スマートグリッドの衝撃


 「スマートグリッド(smart grid)」は、オバマ政権が打ち出している壮大な規模の 「エネルギー革命」を意味しています。 その目的は、「エネルギー使用を全体最適化すること」にあります。そして、その結果として、 CO2の排出量を削減し、先進国の中では効率の悪いアメリカ社会を省エネ化しようと するものです。それは、差をつけられた日本などの先進国に追いつき・追い越し、 今はきわめて効率の悪い新興国に対して優位に立つ戦略です。

 オバマ政権は、スマートグリッドをまずアメリカで推進し、 ついでヨーロッパや日本などに普及する前に主導権を握ろうとしています。 また、人口の多いBRICs諸国やこれから発展が期待されているVISTA(ベトナム、 インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)で優位に立とうと しています。

 スマートグリッドは、アメリカ発のテクノロジーであるインターネット (WWW:World Wide Web) と類似しているシステムであることが特徴です。すなわち、電力網(と情報網)が蜘蛛の巣 状に構築され、しかもクライアントは双方向に電力(と情報)のやりとりが出来るシステム です。試算によれば、2030年までに135兆円(1.5億ドル)が必要とも言われて います。以下、下の図を中心に詳しく見て行きます。







 スマートグリッドとは、 「発電システム、蓄電・放電システム、 送電システム、制御システム、 付随サービスなどを総合したシステム」です。技術やビジネスの裾野が広く、 かつ非常な大規模な変革になることが特徴です。

 もっとも重要なのは、電力システムがこれまでのように、「供給側」対「消費側」のような 一歩通行の単純なシステムではなくなることです。電力はインターネットのように 双方向で行き来するようになります。そして、 双方向に流れる電力の量が時間によって激しく変化します。



 まず、電力の供給ですが、これまでは発電所が供給し、 家庭なり企業などの消費者が消費するといった単純な構図でした。 しかし、スマートグリッド後では、発電所はこれまでの火力、水力、原子力に加え、 @太陽光、A風力 などの自然エネルギー発電所が加わります。

 太陽光発電は、大規模な太陽光発電所のほか、小規模ですが、 オフィス、工場、一般家庭、ショッピングセンターなどに設置されます。 また、カルフォルニアやサハラ砂漠には、、 太陽がサンサンと輝きかつ日本の国土を越える面積の「空き地」があり、 ここに超大規模な太陽光発電所が作られるかも知れません。

 これら@Aなどの自然エネルギーは季節によって、その日その地域の天気によって 発電量がばらばら(まさに、風まかせ、天気まかせ)なのです。 ある日は発電しすぎて余った余った余剰電力がスマートグリッドに 逆流させ、別の日は不足なら電力を消費します。



 電力を消費する側もこれまでのように単純ではなくなるでしょう。まず、 近い将来普通になるであろう、 B電機自動車 です。この電気自動車は電池をつんでいます。そして、電気自動車は 家電のように家庭にじっと待機しているわけではなく、街やオフィス、観光地に動き、 そのたびにあちこちで充電動作を行うことになるでしょう。 このために、電力の消費がきわめて流動的になります。

 また家庭や企業でも発電を行ったり、それを蓄電し使用し、余ったら売電したりします。 これらの電力量は、やはり季節によって、その日その地域の天気によってばらばらなのです。 これをできるだけ平準化するためには大容量の電池が必要です。 そのためには、 スマートグリッドのあちこちに、 C電池センター が必要かもしれません。



 なお、発電所など大規模な電池はNAS(ナトリウム・硫黄)電池、 電気自動車などの小規模な電池はリチウム・イオン 電池が現在は優位です。しかし、技術的には、燃料電池や電気2重層キャパシタも まだ逆転の芽は十分あるでしょう。

 また、太陽光発電パネルは、将来も効率のよいSi系が主流でしょう。 現在は薄膜系がコストでSi系に対して有利でしょが、将来はSi系がコストでも優位に なると思います。



 またこのような複雑かつ大規模なシステムを、 一貫して制御できるD電力情報制御 が重要です。 そのためにはどこでどのぐらい発電されているのか、送電されているのか、 どのぐらい電力余っているのか、足りないのか、そういったことを正しく E電力計測システム も必要です。

 その計測システムの情報にしたがって、制御できる発電(火力、原子力など)を行うのか、 止めるのか、あるいはどの地区からどの地区へ電力を振り向けるのかを正しく 判断できなくてはなりません。また、今後どの地区がどのぐらいの電力を必要としているのか、 電力が余っているのか、もリアルタイムで正しく予想できなくては なりません。

 口で言うのは簡単ですが、スマートグリッドでは天気、風向き、気温 (F気象衛星からの情報)など、 あるいは自動車の移動先(GPSによるG位置情報)が システム全体にかかわってきます。 それをどの単位(空間、時間)でどのように制御システムを構築するのか、 課題はたくさんあります。



 また、一般的に家電は直流で動きます。今までは送電線によって 送られてきた交流を家電に入力して、その内部でA/DCで交流を直流に直して使っています。 ところが、家庭の太陽光発電は直流なので、これを現在の家電で使用するためには いったん交流にして、家電内部でまた直流にする、という非効率的なことを しなければなりません。

 そこで家電は、直流入力、 交流入力の両方で動くようにしなければならないでしょう。 また、家庭、オフィス、商店、工場での HLED照明 は発光効率の観点からも常識になるでしょう。

 また、太陽光発電の適しているのはなんと言っても砂漠です。ヨーロッパの電力は サハラ砂漠が供給し、ニューヨークの電力はカルフォルニア砂漠が 供給するようになるかも知れません。電力を供給する場所と使用する 場所が離れている場合、重要なのは送電システムです。 特にI長距離超電導ケーブル に注目しています。



 その他では、電気自動車をわざわざ 「I充電スタンド」 まで充電しに行くのは めんどうなので、ショッピングモールに駐車している間に、非接触で充電してくれる 「J非接触充電」 の技術も重要でしょう。

 スマートグリッドとは直接関係ないと思いますが、火力(石油・石炭)などから出た CO2を液化して地中深くに埋めてしまう 「KCO2地中閉じ込め」技術も完成が 待たれます。この技術が完成すれば、当面(100年以上)は太陽光発電などは 必要なく、石炭火力でエネルギー問題は解決してしまいます。



 最後のスマートグリッドのリスクに関して簡単に記します。原子力には将来も 「大事故リスク」があるでしょう。風力発電は、騒音、生物との共生など 「環境との調和」のリスクがあります。

 CO2を地中に閉じ込めても、地震などの災害時にCO2が大規模に噴出するリスク はないでしょうか?電気自動車には電池が高くて当面はわりに合わないリスクが あります。電池は19世紀にボルタ電池が発明されてから基本的原理が 変わっていません。ここが大きなリスクです。



 以上のように、スマートグリッドはインターネットがはじめて登場した 時と同じような衝撃を社会と市場に与えると推測できます。 この衝撃がいつ株式市場に織り込まれはじめるかを注視して 行くことになるでしょう。

 また、地球温暖化や資源価格高騰は人類のテクノロジーがもたらした災いです、 この災いを克服するのもテクノロジーでなければなりなせん。決して、
「レジ袋を貰わないようにする」
などという自己満足だけではダメだと思います。

 また、日本では、
「地球温暖化を防ぐために、家計に〇〇円負担を御願いする…」
などという当局の発言が報道されたりしますが、これではダメです。地球温暖化を防ぐ ことが、大きな義務や負担の発生と考えては、成功しないと思います。

 アメリカでは、
「スマートグリッドは多くの新しい産業を生み出すので、△△ドル儲かる…」
と考えてようとしています。資本主義では、何事も儲からなくては価値はありません。 環境問題もその例外ではなく、その考えこそが成功に導くでしょう。





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