16/04/30(STA) 液晶から有機ELへ


 AppleがiPhone用ディスプレーを、液晶パネルから有機ELパネルに切り替えるととの報道が 駆け巡ったのは昨年の初冬のことでした。 リーディングカンパニーのAppleが液晶から有機ELに寝返れば、 他社も雪崩を打って有機ELに大移動するだろうといわれています。

 10年前、日本中のテレビが分厚いブラウン管から薄型の液晶に一斉に置き換わったことを彷彿とさせます。 株式市場ではいくつかのテンバーガーが出ました。 今回も楽しみです。





 AMOLED(Active Matrix Organic Light Emitting Diode)で現在先行しているのは韓国のサムソンとLG電子です。 この2社はすでに量産実績があり、特にサムソンはこの数年で1兆円を投じる計画です。 LGは車載用とテレビにターゲットを絞るようです。

 これを追いかけるのはジャパンディスプレイシャープです。 しかし、ジャパンディスプレイはまだ量産実績がなく、そのための多額の設備投資をする余裕がありません。 一方シャープは、鴻海に主導権を奪われたものの、有機ELに2.000億円投じる資金が出来ました。 また国内には、ソニーパナソニック連合がありますが、 ここはまだ長期戦略を決めかねているようです。



 さて、日本企業の強みは液晶の時と同様、ディスプレイではなく、 製造装置と材料だと思います。 まず、製造装置と材料に関してはこの1週間でずいぶん具体的な情報がネットにアップされています。

 一番衝撃的だったのは、 キャノンの子会社キャノントッキにサムソンが向こう3年分の製造装置の注文をしたため、 他社が注文してもいつ納入されるか分からないというとんでもない事態になっていることです。 「製造装置需給に赤信号」とまで言われています。

図は河合光学のWEBページによる真空蒸着装置の模式図。




 キャノントッキの製造装置は「真空蒸着装置」でしょうから、 サムソンは真空蒸着プロセスを採用するようです。 このプロセスは、
@プロセスに長い時間を要する
A大きな基板が使えない
B材料の9割以上が無駄になる
C高価なマスクを用いる
等の欠点があります。 しかし、これまで実績があるので当面は真空蒸着プロセスで行くつもりなのでしょう。

 またキャノントッキも大型基板に適した蒸発源「パラレルショット蒸発源」を開発したようです。 これによって@Aの欠点が克服され少しはコスト高を押さえられるかも知れません。

 キャノントッキの蒸着装置を組み立てているのは平田機工です。 同社の株価が5か月で3倍になったのはこのためでしょう。 こおキャノントッキに対抗できるのは国内ではアルバックだけでしょう。 キャノントッキから真空蒸着装置の供給を受けられない企業は、 ここに発注する可能性が高いです。 特にシャープ・鴻海の動向に注目です。



 次に材料ですが、まず2017年に登場するiPHONEは曲面形状やフレキシブルなディスプレーではなく、 ポリイミド(PI)基板を使ったフラットなディスプレーになる公算が高いと言われています。 ガラスではなくPIを採用するということは、まずは軽さを重視したということでしょう。

 PIは熱にも強く折り曲げにも強い優れた材料ですが、 ガラスに比べてコスト高になります。 また、PIにTFT(Thin Film Transistor)を形成する技術は確立されたのでしょうか? 外部環境かの封止性はどうなのでしょうか? 何らかの加工をする必要がありそうです。 なお、サムソンは現在宇部興産のPIを使っています。



 次に発光材料ですが、実績があるのは大手2社、出光興産住友化学です。 特に出光興産は現在有機EL材料でシェアトップです。 5層材(発光材料、正孔輸送材、正孔注入材、電子輸送材、電子注入材)とも供給できるところが強みです。 なた同社はアメリカの著名なベンチャーUDC社と共同開発を行っています。

 しかし、大手は有機EL関連の売上に対するシェアはいくら頑張っても数%でしょうから、 投資対象としては面白くありません。 投資対象はやはり小型株、 保土谷化学ケミプロ化成ということになります。



図は佐鳥電機のWEBページによる。
電子注入層EIL(Electron Injection Layer)がないタイプ。基板はPIではなくガラス




 保土谷化学は、韓国勢に正孔輸送材や電子輸送材を供給している実績があります。 また同社には、合成技術や精製技術、有機光導電体材料といった技術的蓄積があり、 有機EL材料に近いところにいます。

 ケミプロ化成は、蛍光や燐光の発光材料、ホール輸送材料、電子輸送材料の 技術開発力に定評があります。 また、封止材料など有機ELディスプレイを量産する上で欠かせない材料も量産しています。



 他にも有機EL用のマスクを開発したVテクノロジー、 イオン注入装置の日新電機、 アルバックの関連会社で真空蒸着装置を手がける昭和真空、 その他、検査装置、リペア装置、組み立てロボット、透明電極材、絶縁膜材、等、 液晶の時と同様に投資チャンスのある銘柄はたくさんあります。



 

 ※ 株は自己責任で売り買いしてくださるよう お願いします。