| 11/12/25(SUN) 実質GDPの推移から近未来を考える |
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実質GDP(国内総生産)のこの41年間の推移と、それに対する寄与の内訳を分析しながら、
これからの株式投資への姿勢を考えてみます。多少長くなりますが、根気よくお付き合い下さい。 下図はこの40年あまりの日本の実質GDPの推移とそれに対する寄与の内訳です。 その簡単な分析をする前に、図で使われている用語の説明をします。 まず、黒線はこの40年の日本の「実質GDP」の推移です。「実質」というのは、物価の上昇や下降を考慮 した数字であるということです。 もしGDPが+10%増えたとして、物価が+5%上がれば「実質GDP」は+5%ということになります。 同じく、GDPが+10%増えたとして、物価が+10%上がれば「実質GDP」は±0%(変わらず) ということになります。 さらに、GDPが+10%増えたとして、物価が+15%上がれば「実質GDP」は-5%(減った) ということになります。 もしも、GDPが±0%(変わらず)でも、物価が-5%下がれば「実質GDP」は+5%増加ということに なります。このケースでは、統計上は実質DGPが増えて景気がよいように見えますが、実際はデフレ状態で、 ハッピーリタイヤした人のようにすでに資産を築いてしまった人以外は不況感を持つでしょう。 今の日本はまさにこの状態です。 「民間最終消費支出」(ピンク色) とは、主に家計(個人)が消費する支出です。日本の場合、この消費支出がDGPの過半数を占めています。 下図はその額を示すのではなく、消費支出の増加または減少が実質GDPに寄与した割合を 示しています。他の項目も同じです。 「民間総資本形成」(水色)とは、民間(企業、個人)の住宅への投資、企業の設備投資あるいは 在庫への投資を合計したものです。ちなみに、企業が中国などの 外国に工場を建てる場合は、「民間総資本形成」ではなく、「輸出」になります。 (この点は調べていないので自信がありません) 「公的需要」(赤斜め線)とは、公共事業のような国や地方の役所が発注した支出です。 東日本大震災による復興事業もかなりの部分がこの項目になります。 「輸出」(明るい緑)と輸入(黄色)は説明するまでもないでしょう。 注意するべきこととして、 輸出の伸びは実質GDPに対してプラスの寄与ですが、 輸入の伸びは実質GDPに対してマイナスの寄与になります。 例えば、輸入と輸出が同じ額だけ伸びると実質GDPに対する寄与は±0になります。 「外需」(緑線)として、輸出-輸入の寄与度がプロットしてあります。 図1 「民間最終消費支出」(ピンク色)は他の項目に比べれば安定しています。 この41年間で、この項目がマイナスになったのはわずか3度だけです。 1974年の「狂乱物価」、1991年からの「不動産バブル崩壊」でも「民間最終消費支出」 マイナスになりませんでした。この項目が初めてマイナスになったのは、 消費税増税と拓銀・山一破綻があった1998年、そして リーマンショックに揺れた2008年、2009年だけです。 「民間総資本形成」(水色)とはプラスになったりマイナスになったり 変化が激しい項目です。 この項目は、一般の方が景気がよい年にプラスになり、 悪い年にマイナスになります。また株価が上がった年にプラス、下がった年はマイナスに なっています。 「公的需要」(赤斜め線)ですが、政府が経済対策を打つとこの項目のGDP寄与度が 大きくなる傾向があります。この項目が後にさらに詳しく記します。また、「輸出」(明るい水色)と 「輸入」(黄色)の関係は、円相場と株価の関係に深く係わっていますので、これも後で 詳しく記します。 次に、この41年間をT〜Wの期間に分けて、その特徴を記してみます。 T:高度成長時代(〜1973年) 1950年代から1973年までの日本は、実質GDPの伸び+10%が普通という現在の中国のような 高度成長時代でした。この時代は「民間最終消費支出」「公的需要」が恒常的に大きなプラス でした。つまり、消費者は毎年消費を増やし家電などを買い、政府も毎年公共事業を増やし道路や橋を 作っていました。 「民間総資本形成」は景気が陰ると時々マイナスになることもありましたが、高度成長期では すぐに大きなプラスに回復します。企業は旺盛な設備投資を行って いました。「輸出」は「輸入」よりも大きいことが多く、 円が360円とか308円だったにも係わらずこの頃の日本は貿易赤字国でした。 U:オイルショック〜日本一人勝ち(不動産・金融バブル)時代(1974年〜1990年) 1974年、日本は戦後はじめて実質GDPがマイナスに落ち込みました。 とは言っても、名目のGDPは+20%も伸びでいます。しかし、オイルショックのため物価がそれ以上に上がったため、 実質DGPがナイナスに落ち込んだのでした。当時は「狂乱物価」と言われた ようです。N225は1973年1月に5.359円をピークに1974年10月に3.355円 まで落ちています。 しかし、日本は急速に省エネ国家に変身し、オイルショックを克服します。ここから1990年までが日本 の黄金期です。「民間最終消費支出」は恒常的にプラス、「民間総資本形成」は年を追うごとに プラスが増えていきます。逆に「公的需要」の寄与度は次第に減っていきます。 日本は民間中心の理想的な成長パターンになります。 輸出は1985年頃までは一旦増えますが、1986年以後のバブル経済の頃は逆に輸入が増えていきます。 円相場は300円/ドル台から120円/ドルまで円高になりますが、1990年にかけて逆に160円/ドル の円安になります。輸出が増えれば円高になり、輸入が増えれば円安に なる関係です。また、N225は3.000円台から38.000円台まで10倍以上に上昇しました。 V:バブル崩壊〜暗中模索時代(1991年〜1997年) 1990年、不動産・金融バブルの崩壊が始まります。 株価が下げまくる中、日銀は公定歩合を+0.75%上げるという暴挙に出たのもこの年です。 日本は深刻な資産デフレに陥り、 1992年から1995年にかけ3年連続で「民間総資本形成」がマイナスになります。 これを補ったのが上図@に見られるような「公的需要」です。 1992年には、当時の宮沢内閣が総合経済対策を実施、大規模な財政出動に踏み切ります。 国債依存の増大はここに端を発しています。 政府は1993年、1994年と総合経済対策、緊急経済対策など財政出動を 繰り返します。この対策が効いてに1995年から「民間総資本形成」がプラスに転じます。 日本経済は甦るかに思えました。1992年に14.309円まで下がったN225は、1996年に22.666円 まで回復しています。 W:平成不況〜アメリカの2度のバブルに助けられた時代(1998年〜2007年) しかし、ここでアジア通貨危機が起こります。それは韓国がIMF管理になるほど激しいものでした。 ところが橋本内閣はこのタイミングで消費税アップをはじめとする財政再建にかかります。 1998年は「民間最終消費支出」と「民間総資本形成」がマイナスになりましたが、これを補う 項目がなく、実質GDPは大きなマイナスに落ち込んでしまいました。 続く小渕内閣は、これまででは最大の10兆円を超える総合経済対策 を行いました。そのため上図Aで見られるように「公的需要」の増加が実質GDPをゼロ付近まで 押し上げる効果を発揮しました。 この直後アメリカ市場で顕著になっていた「ITバブル」が日本にも波及、 2000年には「民間総資本形成」もプラスになりました。またこの頃から実質GDPへの「輸出」の 寄与が大きくなっていきました。それとは逆に、「公的需要」の寄与はほとんどなくなり ました。2003年頃から2007年頃にはアメリカで「金融・不動産バブル」が起き、 景気のよいアメリカへの「輸出」と、 中国などへの移転された工場への部品「輸出」が実質GDPを支えました。 X?:リーマンショック〜(2008年〜?) 2008年、アメリカでは「金融・不動産バブル」が破裂、いわゆる「リーマンショック」 がおきました。2009年には「民間総資本形成」が大きなマイナス、頼みの「輸出」も大幅な マイナスになりました。麻生内閣は財政出動を含む「経済危機対策」を敢行し、上図Bのように 「公的需要」を増加させ、 また「輸入」は大幅に減りましたが支え切れず、実質GDPはかつてない-5.5%を記録 しました。 この時は世界各国で「経済危機対策」行われたため世界経済は急回復しました。2010年は各項目ともに 2009年とはちょうど反対になっています。例外は「公的需要」のみで、引き続きプラスの寄与 になっています。 さて、ここからは末来の話です。2011年度終盤、そして2012年以後は 各項目がどのように変化していくでしょうか? まず、「民間最終消費支出」は大きく増えるはずがなくほぼトントンでしょう。「民間総資本形成」も 同様に大きく増えるはずがありません。世界各国の経済が思わしくないので「輸出」は 増えないでしょうが、原発停止を補う天然ガスなどの「輸入」は増えるかも知れません。しかし、いずれも 末来のことなので確実なことは分かりません。 ところが1つだけ確実なことがあります。それは上図Cのように「公的需要」が実質GDPを 支えることです。その理由は、東日本大震災からの回復を図るために菅〜野田内閣がすでに20兆円に迫る 過去最大規模の補正予算を決めているからです。そしてその大部分の執行は2012年に行われます。また、 2013年以後に執行される補正予算がこれから組まれるかも知れません。 また、今回の「公的需要」は従来にない特徴があります。 従来の「公的需要」は、日本列島ほぼ満遍なく、さまざまな業種への効果が得られるように、 広く薄くばら撒く形をとっていました。しかし今回は、そのほとんどが東北3県に集中、また 原発も含む復興と関係が深い業種に限られる形をとっています。言い換えれば、 過去最大の補正予算がピンポイントに集中されるのです。 株式市場でも、これらピンポイントにあたる銘柄が上昇すると考えるのが自然だと 思います。仮に来年以降、世界が景気後退色を強めるとしても、2012年〜2013年にかけては、 国内のピンポイント銘柄の株価だけは堅調に推移すると思います。 ピンポイント銘柄の多くは内需関連で、また年金資金などの株資産圧縮の影響の少ない小型株が優位です。 市場ではすでにその兆候が見えています。 ※ 株は自己責任で売り買いしてくださるよう お願いします。 |