17/12/17(SUN) PBR何倍まで許されるのか?




 新しい四季報(2018年 春号)を用いて、 ROAとPBRの関係を調べてみました



 まずは復習から。

 最近もてはやされているのがROE(Return On Equity)です。 これは、企業の自己資本に対して何%の利益を上げているかを示す数値です。 国内では8%が合格の目安ですが、欧米の12%に比べればまだ低いと言われています。

 このROEの欠点は、自己資本比率が小さい企業、 すなわち財務体質が悪く多くの借金ををしている企業の数字が大きく(良く)なってしまうことです。 極端なことを言えば、赤字決算で自己資本を食いつぶしゼロになった企業のROEは∞(無限大)になってしまいます。

 これに対してROA(Return On Asset)は分母が総資本ですので、上記のような欠点は緩和されます。 そして両指標の関係は、ROE>ROAになります。 例えば、自己資本比率50%でROEが8%の企業のROAは4%です。 また、ROE、ROAともに製造設備や固定資産などが必要な製造業よりも、 それらが不要な非製造業の方がよい数字になります。



 PBR(Price Book-value Ratio)は、ご存知のように、 株価が一株資産の何倍まで買われているかを示す指標です。 全体的な株価上昇とともにPBRが1.0を割り込んでいる企業は少なくなってきました。 優良株は2〜3倍程度、 またバイオやITの一部には、ほとんど利益がないのにPBR10倍も買われている銘柄もあります。



 さて、今回調べたのは、 「高ROAの銘柄が、何倍のPBRまで許されるのか」です。 高ROAの目安として、製造業は10%以上、非製造業は20%以上です。 なお、特別利益などで一時的に利益が膨らんでいる銘柄は含まれていません。 また、PBRは新しい四季報に掲載されている値を用いています。 上記のような条件を満たすのは83銘柄でした。

 直感で考えると、ROAとPBRの関係はリニア(右上がり近似直線)になるように思えます。 高ROAすなわち収益力が増せば株価も上がり高PBRになるのは常識だからです。 しかし、以下のように実際はそうではありません。 不思議なものです。



 下記のグラフ(左側)によると、 製造業ではROAが10%になればPBRは1.5倍〜5倍まで、平均3倍程度まで買われていることがわかります。 ROAが12倍を超えればPBR10倍まで買われます。 しかし不思議なことに、いくらROAが増えてもPBR10倍を大きく超えることはありません。

 唯一の例外は、他とはかけ離れて買われているペプチドリームです。 これを除けば、ROA22%というとんでもない高収益を誇ってPBR12倍まで買われているヤーマンが最高です。 なお、近似曲線である赤太線も18%あたりから横ばいになっています。 なぜこのようになるのかは、今日のところは不明です。





 上記のグラフ(右側)によると、 非製造業ではROAが20〜25%になればPBRは20倍程度まで買われていることがわかりますが、 5倍以下も3銘柄あり、ばらつきがとても大きいです。

 そして不思議なことに、ROAが25%を超えるとPBRは10倍程度以下までしか買われていない銘柄が多くなります。 ROAが大きすぎるとPBRが大きくならないのです。 この例外は、最近上場したウェルビーとZOZOTOWNのスタートトゥデイだけです。

 ROA20〜25%において、赤太線の上にある高PBRまで買われている銘柄と、 25%以上で赤太線の下側のそれほど買われていない銘柄が存在する理由はこれから考察します。 いずれにせよ、実に興味深いと思います。



 今回はっきりしたのは、ROAが10%の高収益銘柄(製造業)はPBR3倍を目安にすればよいということです。 12%なら5倍ですが10倍になることもあります。 非製造業で20%を超えたら、ばらつきは大きいものの10〜20倍までは許されるということです。

 もし自分がHOLDしている銘柄を将来高収益企業になるまで持ち続けていたいとしたら、 株価は上記を目安として上がっていくことでしょう。





 ※ 株は自己責任で売り買いしてくださるようお願いします。





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