光 〜ひかり〜 第ニ章

わからない不安


「お母さん、ねぇ、お母さん!」
 セドリックは二階の自室で小旅行の片付けをしている母親にしつこく付き纏っていた。どうしても、知りたいことがあったのである。

 可笑しい。絶対に可笑しい……。
 お母さんは物事をはっきり言う方だ。
 どうして、ぼくが知りたい肝心なことになるとはぐらかすのだろう?

 セドリックはわけのわからない不安に一瞬、駆られながら、繰返し尋ねる。
「お父さんに何かあったの?」
 母親は片付けていた手を止めて振り返った。
「セドリック、いい加減にしなさい! いい! お父さんはお仕事がお忙しいの。だから、入学式の日にしか帰っていらっしゃらないの、わかった?」
「ぼくはその前にお父さんに会いたいんだ」
「だから、それは無理ですと言ってるでしょう?」
「じゃ、ぼくがお父さんのところに行く!」
 母親は溜息をついた。どうして、この子はこうも強情なのかしらと。双子の片割れは一見、強情そうに見えるが、ちょっと話せば以外とすんなり納得する。対して、セドリックときたら、本当に頑として強情なのである。誰に似たのかしら……と内心、首を傾げる母親である。
「それも駄目です。お父さんはとてもお忙しいのよ」
「お母さんはずるいや。自分だけお父さんに会って来たのに……」
「はいはい。じゃ、貴方は明日からリランダ伯母さんのところに行きなさい」
 どうしてそうなるんだ!と、セドリックはむっとして言い返そうとした時に、一階からローラが母親に声をかけた。
「お母さん、村長さんがいらしてるわよ」
「あら?」
 母親はセドリックから解放されるチャンスに安堵して、行ってしまった。
 それとは入れ違いに入ってきたローラが言った。 
「まだ、やってたんだ……」
「うるさいー!」
 ローラが呆れたようにセドリックを見ている。
「知らないわよ〜。明日から、一人でリランダ伯母さんのところですって? まぁ、せいぜい頑張頑張ってね」
「ぼくは行かないよ! あの従兄弟たちときたら……」

 セドリックの母親は自分たちと同じ双子だった。母親の双子の姉である伯母リランダは商家に嫁いでいて、二組の双子の母親である。生活レベルは首都カイツの商家であるせいで、かなり裕福な部類に入っていた。その双子の従兄弟達はセドリックより二組とも年上で、セドリックが嫌っているのは下の方の双子たちの方である。一つ上なだけで年上風を吹かして偉ぶったり、命令したり、言うことを聞かないと意地悪をするのである。特にセドリックに。

「ギル様はどうするの?」
「ぼくは行かないって、言ってるだろう!」
 ローラに怒っても仕方ない。そう思っても、どうしても納得できなくて、やつあたりしてしまうセドリックである。
 入学式では遅いのだ。学校でなく魔法見習に行きたいのである。だから、その前に父親に会って、もう一度、話しをしたかったのである。

 どうして、今回だけ、駄目なのだろう?
 去年のこの休暇の時は、お父さんの所に行かせて貰えたのに。
 なぜだろう……。

 セドリックにわけのわからない不安が再び戻ってきた。
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